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「まさか自分が」20歳でがんになった女性。発見のきっかけは“母のひと言”だった

AYA世代と呼ばれる15歳~39歳で、がんを発症する人は年間約2万人ほど。患者数が少ないため、これまではAYA世代のがん患者が抱える様々な問題があまり注目されず支援が少ない状況がありました。 この世代は就学や就職、結婚や妊娠・出産などのライフイベントが集中する時期のため、がんになることで同世代から取り残されたように感じることがあります。また、小児や高齢者と違い医療費の助成が手薄なため経済的な困難を抱える人も少なくありません。2010年頃からAYA世代のがん患者や元患者の声が挙げられ始め、医療者が連携して治療や支援の研究が行なわれてきました。
病室のベッドに座っている女性

※画像はイメージです(以下、同じ)

今回は、一般社団法人「AYAがんの医療と支援のあり方研究会」の理事長であり、医師の清水千佳子先生(国立研究開発法人 国立国際医療研究センター がん総合診療センター/乳腺・腫瘍内科)に、私たちが意識しておいた方がいいことなどについて話を聞きました。また、20歳でがんを経験した、AYA世代の女性にも取材しています。 【前々回記事】⇒若いがん患者から、医師が一番よく聞く“困りごと”とは?他人事なんかじゃない 【前回記事】⇒がんの初期症状ってどんなもの?“お年寄りの病気”じゃない、若い世代のがんの特徴

若い人はがんの進行が早いって本当?

――AYA世代のがんについて、一般的に「若い人のがんは進行が早い」というイメージがあるのですが本当なのでしょうか? 清水千佳子先生(以下、清水)若いからといって、必ずしもがんの進行が早い、予後が悪いということはありません。実際には、がんの種類や見つかったときの進行度合、治療への反応性など、個人の状況によって異なります。全体としては、がんの治療成績が良くなってきており、がんを発症しても長く生きられる方が増えています。 「若い人のがんは進行が早い」という漠然としたイメージから、周りの人から「若いのに可哀想に」と過剰に気の毒がられたり、腫れもののように扱われたりすることで、AYA世代の患者さんは傷ついています
清水千佳子先生の写真

清水千佳子先生

――若い患者さんは、症状や治療以外にも精神的な辛さも大きいのでしょうか? 清水:実際、がんやその治療の影響で、思い描いていた将来像を変更せざるを得なくなることも多いです。今までの自分と変わってしまうような気持ち、周囲に置いていかれるような気持ちから、アイデンティティーの危機に陥り、適応障害やうつを併発するケースもあります。 しかし一方で、がんの患者仲間や医療者、家族や友人など支援してくれる人との出会いを通して、新たな発見があったり、生き方を見つめ直す機会となったと、がんを「ギフト」と肯定的に振り返ることができるようになる人も少なくありません。 もちろんがんにならないに越したことはないですが、多くの人ががんについての正しい知識を持ち、がんの経験をひとつの個性として考えられるような社会となれば、患者さんの精神的な辛さを少しでも軽減できるのではないでしょうか。

「まさか自分が」20歳でがんになった女性の経験談

一般社団法人「AYAがんの医療と支援のあり方研究会」のスタッフで、20歳で甲状腺がんを発症した女性・Aさんにもお話を聞きました。 Aさん:当時は地元から離れた大学に通っていました。学生生活は何かと忙しく、大学の健康診断は毎年サボっていました。でも3年生の時たまたま友人に誘われて健康診断を受けたところ、甲状腺の異常を指摘されたんです。 それで近くの病院で再検査を受けたんですが、「腫瘍は良性だと思うから大丈夫だよ」と言われました
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看護師の母が「心配だから、がん専門の病院で診てもらおう」
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