――上原先生は、もし娘さんが整形手術をしたいと言ったらどうされますか?
上原「
整形手術は、精神的、経済的に自立して、自分で判断できる大人になってから、しっかり考えてやるものだと思います。私たちだって高校生の頃、電車で前髪が決まらない…とか悩んでいたじゃないですか。誰しも、そういう年頃ってあると思うけど、その中で『今日は前髪がいい感じになった』とか工夫をする。それでいいと思うんです」

――大人になるにつれ、コンプレックスと思っていたところが気にならなくなったり、自分の個性や魅力と思えたりもしますしね。
上原「私は、
娘には子どもの頃にやっておかないと後遺症になる治療だけはしてあげています。ニキビの治療と歯の矯正です。ニキビはたくさんあると肌がボコボコになることがあるし、大人になってから治すのは大変なので。歯の矯正も、歯の形に伴って顎の形が変わってくるので、大人になってからより子どもの方が効果的なんです。
一方で、娘は自分で除毛をしているのですが、脱毛レーザーはゆるしていません。健全で自立した精神、判断力を持って、自分で稼いだお金でやることに価値があると思うので」
――小学生を使った美容クリニックの整形の広告など、世の中には美醜などのコンプレックスを刺激するビジネスが溢れています。
上原「本当に悪だと思っています。小学生の二重手術の広告なんて、業界的に悪徳ですよね。二重の埋没の手術って高度なオペじゃないから、初心者ドクターがまず行う手術です。だから、クリニックが増えてきて競争が激しくなってきた。そこで
新たなニーズを獲得しなければと、子どもにまで手を出してきたんです。ただの悪ですね」
――お金のためなら手段を選ばないという点に、恐ろしさを感じます。
上原「
15歳未満の子を整形手術の広告にするって、普通におかしくないですか? デジタルタトゥーとして残る可能性があるし、物心がついて、なんらかの精神的な歪(ひず)みが生じるかもしれない。医師として、母として、子どもをビジネスの対象として広告にするなんて、もってのほかなんです。人としての倫理観、どうなんですか? って問いたい。
こういうことが許されている社会って不健全だと思うので、変えていきたいです。子どもは守られるべき存在ですし、心身ともに健康に育ってほしいと思っています」
【前回記事】⇒
9歳の子はギャン泣き!小学生に美容整形させる大人たち。“反対”の医師に意見を聞いた
【上原恵理先生】
形成外科認定専門医・美容外科医・美容皮膚科医として美容クリニック及び大学病院に勤務。正しい美容・医療の知識の情報をSNSで発信し、多くのフォロワーに支持されている。著書に『
すっぴんクオリティを上げる さわらない美容』『
医者が教える 人生が変わる美容大事典』(ともにKADOKAWA)。Twitter:
@dr_uehara、instagram:
@eri.uehara、YouTube「
えりりんちゃんねる」
<取材・文/満知缶子>
満知缶子
ミーハーなライター。主に芸能ネタ、ときどき恋愛エピソードも。