森の中の一軒家でひとり暮らし。おとぎ話に登場するようなシチュエーションですが、実際にはイノシシや鹿が畑を荒らしていく。その中心人物の中田俊子さんは92歳。中田さんのやさしい人柄と手入れの行き届いた家は、「寄合の場」になっているそうです。

中田俊子さん(92歳)
(写真:内山文寿(内山写真デザイン事務所)、池谷啓)
私の実家もいわゆる田舎の一軒家でしたから、季節ごとに庭を整えるのは結構難儀だということを、身に染みてわかっています。しかも中田さんの住まいは森の中。急斜面にある畑の管理もしているとあっては、その苦労も並大抵ではないと察しがつきます。とはいえ中田さんの庭や家は整然としていて、人が自然と吸いよせられてしまうのでしょう。
その理由は中田さんの人柄に加えて、ていねいな暮らしぶりにあるようです。
食事は自炊、梅干しや柏餅、よもぎ餅なども手作りします。人をおもてなしするのも大好き。ついつい長居してしまうのもうなずけます。
中田さんは趣味も豊富。なかでも14年続けたちぎり絵の作品は見事で、人が習いに来ることもあるのだとか。

中田さんが作ったちぎり絵の作品
(写真:内山文寿(内山写真デザイン事務所)、池谷啓)
独居老人という言葉もあるように、年齢を重ねてのひとり暮らしは、どこかさみしさがつきまといます。中田さんの日常には、日に一度顔を出してくれるご近所の方や、毎週誰かしら来てくれる子ども達の存在があり、日中の畑仕事があります。便利に頼らず、やれることは自分でやるという気概は、高齢になってからこそ役立つのかもしれません。