「どうして同い年のオバサンと浮気するわけ」と言われて
心身ともに相性がよかった。だから別れられなかった。家庭とは別だと彼は強調する。だが妻にはお見通しだったようだ。様子がおかしいと感じた妻は、彼の携帯やバッグなどを全部調べ上げて浮気を確定させた。
「妻にミナコの名前を出されたとき、本当にあわてました。だけど、
ここはしらを切り通すしかないと思った。認めるわけにはいかない、と。
でも妻はどんどん畳みかけてくるわけですよ。『あなたはミナコさんに誘惑されたんでしょ、その気はなかったんでしょ』『過ちよね、言いくるめられてそうなったのよね』と。
ミナコを悪者にして自分のプライドを保ちたかったんでしょう。そうさせたのは僕だから罪悪感はありました。でもミナコが悪いわけではない。聞いていたらミナコが気の毒になってしまった」

しかも妻は、「
若くてかわいい子と浮気するならともかく、どうして同い年のオバサンとするわけ」とまで言い出した。
「妻は5歳年下なので、あたかも私のほうが若いのにと言いたげでした。恋愛なんて年齢は関係ない。
妻への反抗心みたいなものがどんどん大きくなっていきました」
謝ってくれれば水に流すという上から目線に、彼は耐えきれなくなって、頭を冷やしてくると言って家を出た。数時間後に戻ってくると、妻はふたりの子どもとともに消えていた。実家に戻ったことはすぐにわかったが、夫婦での話し合いを放棄し、しかも夜更けに幼い子どもたちを起こして連れ出す妻に腹が立ったという。
当然、彼の行状は妻の両親に知られるところとなった。
「いろいろめんどうでしたが、妻の両親にまで頭を下げさせられて元の鞘(さや)におさまりました。それが1年前です。でもそれきり僕の気持ちは妻には戻っていない。
ミナコとは今でもたまに会っています。もうミナコのいない人生は考えられなくなった。発覚当時はそれほど真剣だったわけじゃないのに」
妻に追いやられたために、ミナコさんとより親密になったと言いたげだ。身勝手な話ではあるが、実際にこういうことは少なくない。だからといって、妻は夫の不倫を見逃したほうがいいというわけではもちろんない。追いつめ方にも工夫が必要なのかもしれないとは感じる。相手の性格次第だろう。
行き止まりまで追いつめてはいけない。
逃げ場をなくして追いつめれば、人は思ってもいない方法でそこから脱出を試みるかもしれないから。そんな気がしてならない。
<文/亀山早苗>
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