え? これもだめなの! 良さそうな治療法にもNGポイントが
④首のけん引
頸椎捻挫(ムチウチ)の治療として整形外科などで行われているのが「首のけん引治療」。しかし、首こり病の患者さんがこの治療を行うと、異常が起こっている筋肉にさらに外傷が加わり、逆に症状を悪化させるケースがあります。また、けん引治療によって首の状態をこじらせてしまう人もいるんだとか。
⑤首の固定(カラー)
けん引同様、頸椎捻挫の治療として、整形外科などで行われるのが「カラー療法」。首をカラーなどの装具で固定する治療法ですが、首こり病の患者さんがこの治療法を行うと、効果が少ないだけでなく、首の筋肉をこり固まらせ、むしろ回復を遅らせてしまうことが大規模研究によって明らかになっています。
⑥ペインクリニック
首の痛みが強いあまり、痛みをやわらげようと「ペインクリニック(麻酔科)」に行く人もいます。ペインクリニックは、痛みを治療・解消する医療機関で、神経ブロック注射などを行って、主に「痛みを遮断」する治療を行います(※星状神経節ブロックなど違うアプローチの治療を行うペインクリニックもあります)。この場合は、麻酔薬を使って一時的に痛みを感じなくするだけの治療なので、時間が経過すると痛みは再発。首の筋肉の痛みに対してはおすすめできません。
じゃあ、首こり解消に自分でできるケアの方法は? と思う人もいるかもしれません。前出の松井先生の監修書で挙げられている、首こり解消のために自宅でできるセルフケアの方法の一部をお教えします。
①長時間のうつむき姿勢を避ける
15分(無理なら30分)に1回でもうつむき姿勢をやめて首の筋肉を軽くほぐすようにする。

松井孝嘉先生監修『首こりを治せば体と心の不調の9割は治る』より。同書には他にも首こり解消のセルフメソッドが紹介されている
②とにかく首は冷やさない
これから暑くなってきますが、エアコンの効いた部屋で首は知らずに冷えてしまい、血行が悪くなった結果、首こりにつながってしまいます。定期的に、温めたタオルを首に巻いて、首を温めるようにする(ただ、偏頭痛のときや外傷を受けた直後は冷やしましょう)。首の後ろ上部を温めるのがポイントです。
③揉まずにゆるめる
前出のように、揉むのはNG。首こりには周囲の筋肉をゆるめることが大切です。ストレッチのように強く伸ばすのではありませんが、うつむき姿勢をやめて上を向いたり、首をゆっくり回すことで周囲の筋肉がほぐれてゆるみます。
なお、これまで、松井先生の「頸椎捻挫」「不定愁訴」「慢性疲労症候群」「難治性うつ」の研究・治療の有効性については世界の権威誌で公表され、「エビデンスに基づく医療」として認められたもの。これらの松井先生の研究は最新版が、2022年10月にイギリスの権威誌
『BMC』で公表されています。
上記のセルフケアの方法は、こうした松井先生の研究・治療の結果、たどりついたものです。
なんとなく調子悪いな、首がこってるな……。そんな人は、NGな方法を行う前に、是非試してみてください。首こりを防ぐセルフケアを日常生活に取り入れましょう。
なお、首こりを放置すると、頭痛、メマイ、疲れやすい(全身倦怠)、うつなど、さまざまな症状や病気が現れてきます。もしセルフケアで治らないほどつらい症状が出てきたら、医師への相談が必要です。
【松井孝嘉先生】
東京大学医学部医学科卒業後、同大学脳神経外科教室に入局。その後、アルバートアインシュタイン医科大学に渡り、脳腫瘍・脳血管障害を研究。ジョージタウン大学では、世界初の全身用CTの開発に携わり、日本への導入・普及に大きく尽力する。ムチウチの治療法開発から、ムチウチと他の疾患の症状が似ていることに気づいた私は78年に「頚性神経筋症候群(首こり病)を発見し、診断法と治療法を確立し、首こりに起因する不定愁訴の治療を初めて可能にした。06年に、恩師である東京大学名誉教授・佐野圭司氏を所長として迎え、東京・虎ノ門に「東京脳神経センター」を開設。監修書『
首こりを治せば体と心の不調の9割は消える』が発売中