私も2、3回、アプリで既婚者の独身詐欺に騙されそうになった。 ただそういう鬼畜男の誘い方にはあるパターンがあって、2度目、3度目になるとマッチングして1週間もすると「あっ、こいつ怪しい」とカンが働くようになる。まあそんなクズの見分け方なぞ一生、無縁でいたいものだが……。 その記念すべき（？）初回の既婚男は、ネットの旅行代理店を経営している45歳のタクだ。 私は大学卒業後、2年だけ旅行代理店で働いていたことがあり、ヨーロッパや米国に頻繁に行っていて旅事情に詳しいタクとの会話は楽しかった。 例えばコロナ禍でフライト事情が変わった時期、ヨーロッパへの一番安価でサービスがいい乗り継ぎエアラインはどこなのかとか、入国に必要な書類は何なのかとか……。 さらにタクは学生時代、社会学を勉強していたのでジェンダーについても割と詳しく、日本の遅れたジェンダーギャップへの批判もよく勉強している感があった。 「医者も学者も起業家も、本当に優秀な女性はみんな日本に嫌気がさして海外に流出してる。しかも向こうで結婚して戻ってこない。彼女たちの意見を取り入れていかないと、日本はこれから人材不足でキビしくなるよね」 そんなフェミニスト的な会話ができる男性も珍しかったので時々、LINEで他愛もない会話をしたり、カフェで旅情報を教えてもらったりするようになった。 しかし、一つ引っかかることがあった。それはタクが週末、まったく連絡が取れなくなることだ。 「旅行代理店は週末がかき入れ時だから休めない」というが、夜までずっと連絡が取れないのは納得がいかない。それに、タクの家は「病気の姉と同居しているから家から連絡ができない。人も呼べない」という。ますます怪しい。 何か裏事情があるに違いない。 少しずつ疑問が膨れ上がっていって、やがて「1人探偵事務所」を開業することにした（自慢じゃないが私の取材力は、そのへんの探偵事務所よりずっと調査力、追跡力、分析力が優れている。浮気・不倫などでお悩みの方はぜひ当方に相談を依頼してほしい（笑））。