ある意味、セックスだけが目的で獲物を狙う既婚者やヤリモクにとって、アプリほど安全で都合のいい狩場はないということだ。 ……というわけで、過去のポストから見事に既婚が発覚したタクは、彼のフェミニスト論とは真逆の、女性を搾取する鬼畜だったわけだが、どうやってこの怒りを伝えるべきかしばし悩んだあげく、LINEではなくて電話をすることにした。 1週間、間を空けて平日の夜11時、何気なく電話すると、タクはいつものように「おおっ、元気？」と電話に出る。 「ちょっと聞きたいことがあって」 「何？」 「タクくんって結婚してる？」 沈黙。空気が凍りついたのがわかる。 「どうして噓ついたの？ アプリでは規則違反だし法律でも結婚詐欺として逮捕される案件だけど」 沈黙。 「休みの日会わなかったのは仕事じゃなくて、奥さんや子供と過ごしてたから？」 沈黙。 「許せないからアプリのサポートに通告しとく。それじゃ」 ガチャ切り。 タクがまた詐欺行為を働かないようにアプリ側に通報して、彼を強制退会させようと思っていたのだが、電話をしたら怒りも消えてしまった。 彼は独身を騙ったことを悪いとさえ思っていないだろう。タクのように、アプリを出会い系サイトと同じくセフレ探しに使っている男性は少なくない。その中には既婚者も相当数いる。彼らは毎日、遊び相手を探すためにマッチングし、どんどん乗り換えていくのだ。 真剣な婚活者とこうしたセフレ探しがマッチングしてしまうと、ダメージを負うのはやはり女性婚活者側だ。