実写版『リトル・マーメイド』黒人歌手起用で物議も、リメイクで圧倒的に良くなった点と残念ポイント3つ
賛否ある配役とアプローチを肯定したい理由
この実写版『リトル・マーメイド』で特に賛否を呼んだのは、アニメ版では白人の見た目に思えたアリエル役に、アフリカ系アメリカ人であるハリー・ベイリーをキャスティングしたこと。
アニメ版に強い思い入れがある人からの否定的な意見はある程度は致し方ないと思うし、「オリジナル作品での配役だったら良かったのに」という意見には同意できる部分もある。
しかし、その歌声は実際に観た人の多くが絶賛しているのは事実であるし、何よりとても愛らしい。
「アニメ版に比べると表情がかたい」という意見も見かけたが、アニメ版の表情を実写でそのまま再現してしまうとオーバーな印象になっていたと思うので、個人的には演技のバランスとしてもハリー・ベイリーはベストを尽くしたとは思えた。
また、カニのセバスチャンと魚のフランダーが「あまりにカニと魚すぎる」などと、実写化でリアルになったことが揶揄の対象になってしまったが、個人的には彼らの掛け合いそのものが楽しいおかげもあってすぐに慣れた。声の出演者の力も大きかったと思う。
このあたりの配役や実写化へのアプローチは、個人的な好みによるところが大きい。気にいるかどうかは、実際に観てみるしかないだろう。
元の物語を尊重し、多様性を示した
今回の実写版『リトル・マーメイド』で総じて良かったと思うのは、元のアニメ版の物語を大切にしていたこと。大筋の物語の流れは変えず、種々の描写を追加することでアリエルとエリック王子が惹かれ合う説得力が増している。無難という言い方もできるが、やはりオリジナルへのリスペクトと、改変のバランスがうまいと思えたのだ。
さらに、ラストの展開そのものはアニメ版とさほど変わらないのに、実写ならではの画の力により、押し付けがましくなく多様性の素晴らしさを改めて示すことにも成功していると思う。
その意味でも実写版『リトル・マーメイド』は現代でリメイクされる意義が大きく、スタッフとキャストが真摯に向き合った作品であることも間違いないと、支持をしたいのだ。
<文/ヒナタカ>
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ヒナタカ
WEB媒体「All About ニュース」「ねとらぼ」「CINEMAS+」、紙媒体『月刊総務』などで記事を執筆中の映画ライター。Xアカウント:@HinatakaJeF








