
ふと、すっかり疲れていることに気づき、カフェに入りました。さきほど購入した本をすぐに読みたくなり、手に取ったのは『乳がんと診断されたらすぐに読みたい本 ~私たち100人の乳がん体験記』。

『乳がんと診断されたらすぐに読みたい本 ~私たち100人の乳がん体験記』(エッセンシャル出版社)
こちらは医学的な解説はメインではなく、実際に乳がんになった女性の体験記。2名の医師監修がついています。子どもと仕事を抱えながらの乳がん治療を、面白おかしく書いていて、読んでいてくすっと笑ってしまうことが何度もありました。
きっと実際には今のわたしのように大変なこともたくさんあったのでしょうが、「がん患者デビュー、上等!」とヤケクソな気持ちになったシーンや、夫に乳がんを伝えたあとのひと言目が「同窓会、行っていい?」でズッコケたシーンなど、治療にまつわる体験談のドタバタ感が愉快で、これからわたしもこんなユニークな体験ができるのか、と今後始まる治療が楽しみにさえなってしまいました。
さらにそのほか、100人の乳がん経験者のアンケートもあり、治療中に困ったことなどの経験談がたくさん掲載されていて、それも「いつ脱ヅラしましたか?」など面白くてためになるアンケートが多く、思わず一気読み。
治療期間中もずっと私の支えになってくれた本で、私のなかの得体のしれない「がん」という未知のものを、「実際に乗り越えられるもの」という現実的なものに変えてくれた本で、いまでも本当に感謝しています。
医学的な情報をきちんと知ることはもちろん大事ですが、実際に体験した人の話は、自分のこととして現実的にとらえるにはとてもよいと実感しました。だからこそ、私もこれから自分が体験することを、きちんと記録して体験談として伝える機会があればいいな、とこの頃から考えていました。
書店でがん関連の本を買い、カフェで本を読んで落ち着きを取り戻した私。いざ帰宅しようと、家に向かいました。家族の顔をどんな顔で見ればよいのか、なんと言えばいいのかわかりませんでした。
出迎えてくれた夫は、何と声をかけてよいのかわからないような顔をして「大変だったな」とわたしを迎えてくれました。できるだけ平静を装っていたかったのですが、やはり気持ちがこみあげてきて、思わず大声で泣いてしまいました。
乳がんと言われてから帰宅するまで、ずっとこらえていたものがあふれ出してしまったのだと思います。ダムが決壊したような、とめどない涙。自分でもびっくりするほど大泣きしました。
当時小学3年生だった息子は、そもそも「がん」がどんな病気かもいまひとつ理解できていません。なので息子には「母ちゃん病気になって、手術しなくちゃいけないんだけど、ちゃんとやれば治るんだって。頑張るね」とだけ伝えました。息子も私が泣いているのを見て驚きつつ「うん、大丈夫だよ、がんばってね」と言ってくれました。
その日のクリスマスに結局何を食べたのか、いまいち覚えていません。作る予定だった何かをやめて、チキンやピザを買って食べたような気がします。クリスマスだからできるだけ楽しくすごしたかった。そして年越しも迫っています。ずっと泣いてはいられません。