福岡出身の俳優2人に共通する“色っぽさ”。地元の地域創生プロジェクトも手がける
日本全国、どこの地方にもそれぞれご当地名物がある。でもそれは食べ物や伝統品だけじゃない。その地方出身のイケメン俳優だって立派な名産品。
今回注目したのは、福岡県。特にイケメン出生率が高い(と筆者は思う)地方だが、今回は特筆すべきふたりを取り上げてみたい。
「イケメンと映画」をこよなく愛する筆者・加賀谷健が、ふたりの俳優に共通する九州男の色っぽさを嗅ぎ取る。
九州にはなぜだかイケメン俳優が多い。横浜育ちながら、福岡県柳川市に生まれた妻夫木聡もその代表格。小学2年生までの期間を福岡で過ごした妻夫木からは、まぎれもない九州の男臭さがむんむんなのだ。
彼の演技から濃密に漂って仕方ないその香り。例えば、李相日監督による力作『怒り』(2016年)で綾野剛とともに演じたゲイ役には強く嗅ぎ取ることができた。妻夫木の野心的な演技が、役柄の感情に合わせて力強さを増すほどに。
あるいは、台湾での刹那的な逃避劇を描く『パラダイス・ネクスト』はどうだったか。フーテンの堕落者みたいな牧野(妻夫木聡)が湿度の高いむしむしした空気感の中で素肌をさらす。香港映画界悲劇の大スター、レスリー・チャンを思わせる危うげだが極めて色っぽい官能性を匂わせていた。
台湾の風土と見事に溶け合っていたように、妻夫木は地域的な特色をうまく表出する俳優だと思う。九州生まれだという土着した感覚が彼の色気そのものを引き出す。これが妻夫木にしかない特有の才能だと思うのだ。
第46回日本アカデミー賞で最優秀主演男優賞を受賞した『ある男』(2022年)の冒頭場面が興味深かった。妻夫木の初登場は、映画開始からすこし経った頃、宮崎空港に着陸する直前の飛行機内。滑走路に向け旋回した飛行機の窓から強い日差しが入る。
あれ、妻夫木の顔が、その光でかすんでよく見えない。彼が演じる弁護士は横浜から九州の地へ出張でやってきた部外者だが、妻夫木本人からしたら九州への帰還みたいな役柄だ。
俳優の出自とキャラクター設定が絶妙にミックスされたことが『悪人』(2010年)以来、2度目の最優秀主演男優賞受賞の理由だとさえ思ってしまう。





