事故が起きたのは、山縣さんが中学3年生の夏のこと。地元の穴場の海水浴場で、友人たちと泳いでいたときのこと。気づかないうちに全員が潮に流され、
元いた砂場のあるエリアから、数十メートル横に流されていたそうです。
「『沖に流されているわけじゃないから、どうせすぐ戻れるだろう』と思って、余裕ぶっていたんです。でも、いくら元の場所に戻ろうとしても戻れない。たとえるなら、
“流れるプール”で、流れに逆らって泳いでいるような感覚です。海面は波が立ってるわけでもないし、穏やかなんですよ。でも水中はまったく違う。とにかく焦りました」

それでも必死に泳いでいると、少しずつですが元いた場所が近づいてきました。しかし、ここで予期せぬトラブルが発生します。
「友達の一人が、一気に泳ぎすぎて疲労がたまったのか、海中で足をつって叫んでいたんです。つったくらいなら、引っ張って泳げばいいやと思って、すぐに近くへ行きました。でもその瞬間、同年代とは思えないくらいの力で“引っ張り込まれて”しまって……。
水中から出ている僕の肩と頭に覆いかぶさるようにしがみついてきて、
そのまま声も上げられないまま海中に沈められてしまいました」
その様子はまるで、海中で肩車をさせられているような形だったとか。山縣さんは「溺れている人の力はバケモン級だ」と言っていた祖父の言葉を思い出します。
「それでもなんとか友達を助けようと思ったけれど、どう見ても助けが必要なのは僕の方でした。友達の両手はぼくの髪の毛をものすごい力でわしづかみにしていて、どうあがいても緩まない。足も首や肩にものすごい勢いで絡みついていて、外すことなんかできません。
瞬間的に、『このままだと殺される』と、本気で思いました。本当に怖かった……」
【関連記事】⇒
“くるぶしの深さの川”で溺れた恐怖体験。笑う友人の横で「僕だけ2m下にいた」