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知的障害を“隠して”働く女性に起こったこと。騒ぎの後の「何で教えてくれなかったの?」がつらい|ドラマ『初恋、ざらり』

「何で障がいのこと教えてくれなかったの?」

 元はといえば、有紗が配車の業務をやらなければ、彼女は傷つかず、岡村も別れを切り出されることはなかったのかもしれない。つまりは有紗に配車を勧めたドライバーの千葉(福澤重文)が“元凶”にも思える。ただ、千葉は有紗に障がいがあることを後になって知ったようだ
「初恋、ざらり」

©「初恋、ざらり」製作委員会

 岡村に対して「何で(障がいがあることを)教えてくれなかったの?」「配車の仕事なんてお願いしなかったよ」と口にしていた。それなら障がいのことを教えていなかった岡村に落ち度があったかというとそれも違う。個人の障がいやセクシャリティを第三者が勝手に言いふらす行為“アウティング”という言葉があるように、有紗本人が障がいを隠して働き始めた以上、他人がベラベラ話すことはできない。

職場で障がいを公表するのは、簡単なことではない

 それでも、千葉も障がいについて知っていれば、推薦するにしてももう少し慎重に判断しただろう。仮に有紗が配車を担うことになった場合でも、ドライバー達も注意深く業務に当たることができ、有紗のミスを防げていたかもしれない。同僚に障がいがあればそれを知っておくことは、業務を円滑に行うために大切な情報共有でもある。  当事者のプライバシーに配慮するのなら、やはり本人の口から伝えてもらうしかない。とはいえ、有紗のように障がいがあることを隠して「“普通”に接してほしい」と考える人もおり、本人が自身に障がいがあることを公表することは簡単ではなく、強制することもできない。 【前回記事】⇒知的障害のある女性が職場で「絶望した」理由に胸が痛む…周りの優しさが生んだ“悲劇”|ドラマ『初恋、ざらり』
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先輩はなぜ、有紗ひとりに仕事を任せたのか
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