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知的障害を“隠して”働く女性に起こったこと。騒ぎの後の「何で教えてくれなかったの?」がつらい|ドラマ『初恋、ざらり』

 9月8日に放送された『初恋、ざらり』(テレビ東京系、金曜深夜24時12分~)の10話は、軽度知的障害と自閉症のある主人公・有紗(小野花梨)と、職場で出会った恋人・岡村(風間俊介)の関係性が激しく変化する内容だった。
「初恋、ざらり」

©「初恋、ざらり」製作委員会

すれ違い続けるふたりの関係が歪んでいく

 9話で有紗が配送の業務に取り組むもミスを連発したことをキッカケに、岡村がそのフォローに奔走する。岡村は同僚や取引先に頭を下げ続け、心身ともに疲弊してしまう。一方、有紗も自分の思う“普通”になるために新しい業務に熱心に取り組み始めた矢先、上手くいかなかったことで「できないことが多すぎて苦しい」と絶望感を覚える。  精神的に追い詰められ、岡村に話を聞いてほしいと考える有紗。しかし、岡村のクタクタな様子を見て、気を使って話すに話せない。ふたりで過ごす時間も減っていき、徐々にふたりの関係性が歪みだす。ついに有紗は仕事を休み、母親である冬美(若村麻由美)のもとを訪れて引きこもる
「初恋、ざらり」

©「初恋、ざらり」製作委員会

 岡村は冬美に有紗を連れて帰るように言われ迎えに行くが、本人が会いたくないと言っていると冬美の恋人に説得され、一度は立ち去る。後日、有紗が仕事を辞めたことを知った岡村は冬美の家に再度足を運ぶ。そして、布団を頭からかぶって出てこない有紗を一緒に家に帰るように説得するが、有紗は「もう関わりたくない」と別れを口にした。 【前回記事】⇒知的障害のある女性が職場で「絶望した」理由に胸が痛む…周りの優しさが生んだ“悲劇”|ドラマ『初恋、ざらり』

岡村の優しい嘘と、有紗の表情から伝わる絶望

 有紗が別れを口にした背景として、辛い時に会話ができなかったことだけでなく、さまざまな要素が重なっていた。  彼女が配車業務でミスした一件を受け、岡村は有紗に「廃車はクビだって」と馬鹿正直には言わず、「(元いた)仕分けの仕事、戻ってきてくれないかな」「みんながさ、『有紗ちゃんが抜けて大変だ』『有紗ちゃんに戻ってきてくれ』ってうるさいんだよ」と優しい嘘をついた。ただ、有紗はそれが嘘だと気づく。信頼していた岡村から、嘘をつかれたことに。
「初恋、ざらり」

©「初恋、ざらり」製作委員会

 加えて、「今度こそは」と意気込んで臨んだ配車で大きなミスをしたことにもショックを受け、自分自身が目指す“普通”にはなれないことを悟る。自暴自棄と言ってしまえばそれまでだ。言葉はほとんど発していないもののその表情から、有紗がどれほど追い詰められていたのか嫌というほど伝わった。 【関連記事】⇒障がい者の恋を描くドラマ『初恋、ざらり』で、専門家が唯一「違和感を覚えた」シーンとは?プロデューサーに聞く
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職場で障がいのことを周りに伝えるべきか
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