そもそも、障がいがあることを周囲が知っていたとしても、ミスを防ぐことは難しい。実際天野は有紗に障がいがあることを知っていたにもかかわらず、障がいの有無に関係なく難易度の高い配車という業務を、一時的に有紗ひとりに任せざるを得なかった。

©「初恋、ざらり」製作委員会
別に天野が有紗の障がいを失念していたわけではない。ただ単に有紗と普段接していて“ミスは多いけど、頑張り屋さんな人”という認識があり、なおかつ有紗のためにホワイトボードへその日の仕事の流れを書き留めてもいたため、「ひとりでも大丈夫だろう」と判断したのではないか。
障がいにはグラデーションがあり、第三者にはわからない
障がいにはグラデーションがあり、「何が、どこまでできないのか?」は第三者にはわからない。それに当人であっても100%把握しているわけではない。加えて、パニックになると普段できていたことができなくなるケースもある。天野のように有紗が障がい者ということを知っていても、ついつい
「フォローもしているし、これくらいならできるかも」と任せてしまうのも無理はない。
ただ、障がい者であるかに限らず、誰しも得手不得手がある。その人の個性や特徴を見極めて仕事を振ることは容易ではなく、どのように仕事を任せれば良いのかということを考えたくなる。有紗という障がい者を軸にストーリーが展開されるが、障がいに関係なく、日常のあらゆるシチュエーションに存在する違和感を痛感させられる内容だった。
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<文/望月悠木>
望月悠木
フリーライター。社会問題やエンタメ、グルメなど幅広い記事の執筆を手がける。今、知るべき情報を多くの人に届けるため、日々活動を続けている。X(旧Twitter):
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