「事故当日、市長からは“大丈夫ですか”の一言も無かった」楽器ずぶぬれ被害から1年、楽団が明かす裾野市への不信感
ちょうど一年前のことだ。静岡県を拠点に活動するプロオーケストラ「シンフォニエッタ静岡」が予期せぬ“水害”に見舞われた。
裾野市で行われた公演の開場直前、舞台上方のスプリンクラーが作動し、公演は中止を余儀なくされた。事故後、楽団側は裾野市との対話を求め、根気強く続けているが、未だ解決の糸口はつかめない。
前代未聞の事故は、なぜ起きたのか。「クラシック音楽」をこよなく愛するひとりとして、コラムニスト・加賀谷健が、楽団長の植田明美さんに事の次第を取材した。
2022年9月24日、静岡県裾野市にある「裾野市民文化センター」の大ホールで、シンフォニエッタ静岡の公演が予定されていた。
13時の開場とほとんど同時に、舞台上方のスプリンクラーから大量の放水があり、楽器や楽譜が瞬く間に被水。損失した楽器や楽譜は数億円相当にものぼると言われている。
楽団関係者60名が楽器の救出活動を行い、転倒により怪我を負い救急搬送された者や重傷者も出た。
事故現場の様子を楽団長の植田明美さんはこう語る。
「何が起こったんだろうと思いました。ニュース等では放水がほとんど落ち着たときに撮影した映像が流れましたが、実際の放水は豪雨より激しく、物凄い水圧。すぐに足首まで浸かってしまいました。
前日に台風が来ていたので、大きな音を聞いたときは天井が抜けてしまったのではないかと思いましたが、原因がスプリンクラーだとわかりました」
スプリンクラーからの放水量を1時間あたりの降水量に換算すると、なんと約512mm(スプリンクラー4区画のうち3区画からの放水として)。通常の気象予報では、80mm以上で災害レベルと判断されるため、現場の混乱は想像を絶する。開場間際であったため、来場者が難を逃れたのは不幸中の幸いだった。






