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「事故当日、市長からは“大丈夫ですか”の一言も無かった」楽器ずぶぬれ被害から1年、楽団が明かす裾野市への不信感

市事故調査委員会の調査結果の“矛盾”

 楽団側は2022年12月下旬から裾野市に現地調査の申し出をするもなかなか許可が得られず、ついに一部許可が出たため2023年2月22日に、約20名の市職員や点検業者らの立ち会いのもと、消火設備・スプリンクラー設備の専門家らとともに単独調査を行った。  裾野市は2022年11月、事故調査委員会の設置を発表。2023年3~5月に二つの手法で漏水量が調査され、一方の調査では漏水量が誤作動を起こしうる基準値を下回ったものの、もう一方ではそれを上回る結果に。  しかしその矛盾を残したまま2023年6月27日、「原因は特定できない」と結論づけられた。  市側の調査の一つであるバルブメーカーの「キッツ」が行った漏水量調査と楽団側による調査は近似する結果が出ている。 「市事故調査委員会では、日常点検を担っている業者に行わせた漏水量調査の数値があり得ないものにもかかわらず、再調査を行わずに信憑性のない結論を導き出してしまった矛盾があります。誤作動の可能性から原因追及まで、なぜ特定できなかったのか。不審に思うことばかりです」

「新調して即解決!」とは簡単にいかない話

濡れてしまった楽器

濡れてしまった楽器(2022年9月24日)

 では、事故報道を受けた世間での反応はどうだろうか。ネット上では、「楽器を買い替えたいがためにわざと被水させたのでは」という意見など、楽団を犯人扱いする誹謗中傷が飛び交った。 「買い替えたいという発想がそもそも違います」と説明する植田さんはため息まじりに話す。  プロのオーケストラ奏者にとっての楽器は何年もかけて自分に合う楽器を探し身体に馴染ませるもの。頻繁に楽器を新調することはないし、中には音楽財団から貸与された数千万から数億円単位の楽器を使用する奏者もいる。「新調して即解決!」とは簡単にいかない話なのだ。  さらに文化的に貴重なレンタル楽譜などの被害も確認されているのだが、事故による被害は物理的なものだけでなく、精神的なものにまで及んでいる。
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精神的なトラウマも
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