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「事故当日、市長からは“大丈夫ですか”の一言も無かった」楽器ずぶぬれ被害から1年、楽団が明かす裾野市への不信感

事件後の月例記者会見で裾野市長は…

放水が止まってから10分以上経過時

放水が止まってから10分以上経過時。天井反射板に溜まった水が、照明や板の隙間から落ちる様子(2022年9月24日)

 有事の時こそ、行政による迅速で明瞭な対応が求められる。  事故の11日後、2022年10月5日の月例記者会見にて裾野市の村田悠(はるかぜ)市長は「原因については現在も調査中」としながらも、「本件発生当日の専門業者による調査により、スプリンクラーに異常や故障が無かったことを確認している」と断言。  さらに「このことを踏まえ、人為的操作の可能性があることから、本件発生当日に裾野警察署への相談を行っている」「当市側の被害につきましては、舞台の床、反響板、音響設備、照明設備、グランドピアノなどが浸水し、点検や修繕が必要な状況」と報告。  また、楽団側の被害については下記のように言及している。 「自主事業の実施主体であって楽団との契約相手である指定管理者が調査中ではありますが、昨日の報告によると、楽器、楽譜、演者衣装などが浸水したほか、楽器の搬出作業中の転倒により怪我をされた方が2名いらっしゃるとのこと」 「楽器が水損したこと、怪我をされた方がいらっしゃることにつきまして、楽団の皆様には心よりお見舞い申し上げます」  施設の設置者としての責任への言及が一切ないばかりか、楽団に降りかかった事故に対して、まるで他人事のようではないだろうか。なお、公演中止に伴うチケットの払い戻しは2022年10月11日から開始された。

楽団側が抱く不信感

裾野市長・村田はるかぜ 公式サイトより

裾野市長・村田はるかぜ 公式サイトより

 また、2022年10月27日に行われた裾野市臨時記者会見では事故調査委員会を設置することを発表するとともに「設置や管理に瑕疵があったと認められなければ、公金を拠出し、補償をすることはできかねる」と市の姿勢を示した。  事故直後の対応について植田さんはこう話す。 「当日、事故発生から1時間を過ぎて市職員が到着したとのことですが、誰もオーケストラの被害を確認に来ませんでした。(自主公演を主催する)指定管理者からは一言謝罪がありましたが、指定管理者もその場で被害の確認をすることはありませんでした。  事故から約5時間後、村田市長が会場に来ていたことを指定管理者から聞き、驚きました。被害状況の確認もなければ、謝罪はもちろん『大丈夫ですか』というような声掛けすらなかったので……。  原因はどうであれ、市の施設で起きた事故ですから、裾野市が補償をふまえ事故直後から対応するのは当然のあり方です」  裾野市は、なぜすぐに事故である可能性をふまえ、楽団への被害の確認をとらなかったのか。驚くべきは、事故後の10月下旬に指定管理者側に対して指示されたという内容だ。 「公演料(※)に関して支払い期限の日になって指定管理者から連絡があり、裾野市から原因がわかるまで支払うなという指示があったことを電話口で伝えられました。また指定管理者がシンフォニエッタ静岡と直接連絡を取ることも禁じたのです」 ※後にキャンセル料として支払われた。
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市事故調査委員会の調査結果の“矛盾”
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