未来への不安をひとりで抱えるのはいや。もしも体調を崩したら。もしも仕事が途切れたら。起こっていない未来を想像して、また不安に苛(さいな)まれる。ある日、福々さんは思うのです。「せめて誰かが一緒に歩いてくれたら…」と。こうして福々さんは、結婚相談所の扉を叩きました。
婚活のきっかけを問われた時、「愛する人とあたたかい家庭が作りたいから」と、さもそれっぽく答える人が、いったいどれほどいるでしょう。「早く子供がほしい」「実家から出たい」といったシビアなこたえもあるかもしれません。でも根底にあるのは「不安だから」ではないでしょうか。
明るい未来よりも暗い未来を想定してしまっている。悲しいけれど、私達は皆、希望というはかなさを知ってしまっているのです。
婚活に目覚めた福々さん、当時34歳。20代が売り手市場の結婚相談所では、プロフィールを盛るのが必須。不本意ながら、福々さんも仲人(なこうど)の言うままに女子アナ系ファッション偽装に奔走します。努力の甲斐あって、お見合いエントリーが殺到し、念願のプロポーズ。
しかし福々さんの心は、晴れやかになるどころか苦しいままなのです。目の前にいる相手は、不安を分かち合いたい相手ではないことに気づいたから。結局、不安は自分ひとりでしか解消できない。これこそ見たくない現実ですが、逃げられない現実でもあるのです。