
牛に願いを Love&Farm スペシャルパイロット版DVD(ポニーキャニオン)
デビュー当時の玉山はどうだったろう。2001年に『百獣戦隊ガオレンジャー』(テレビ朝日)で戦隊ヒーロー役で登場し、ぴちぴちの若さ弾け、ゼロ年代を代表するイケメン俳優だった。
期待の若手として話題作が途切れることはなく、若さそのものが武器であるかのような野心的な様は、例えば『太陽がいっぱい』(1960年)で世界的スターになったアラン・ドロンのようにギラギラしていた。
ゼロ年代の玉山の代表作と言えば、『牛に願いを Love&Farm』(フジテレビ、2007年)だろう。
北海道の牧場を舞台に酪農実習生の青春を描く本作は、金子ありさの脚本によって人物像が鮮やかに浮かび、玉山の好演を後押しした。
基本はクールな二枚目キャラだが、どこか憎めない姿を緩急つけて演じた。同作から年齢を重ね、眉間に皺を寄せるようになっても、天海祐希主演作「BOSS」シリーズ(2009~2011年)では若さを残した色気がやはり魅力的だったのだが。
それがどうだろう、『マッサン』冒頭の老齢姿を見て以来、印象はガラリと変わった。同作以後、玉山は加速度的に露出がすくなくなり、世間から身を潜めるようになったように思うのは気のせいだろうか。まるで老齢の者としてゆっくり歩調を緩めるように。
ドロンが30代を超えたあたりからギャング映画でダンディを追求し始めたように、ニヒルな若々しさではなく、落ち着いた大人の余裕として映る自分の姿を玉山も目指し、適役を求めたのか。
そんな折、オーディションで得たのが、『ルパン三世』の次元大介役だった。これこそ玉山が憧れた大人の極地への第一歩。同世代の小栗旬の渋さ以上に急激にアダルトな雰囲気をまとわせ、観客をあっと驚かせた。