だからこそ、篠宮に罪悪感を一方的に明かしてしまうシーンは、胸がつぶれる思いだった。しかもその告白が、篠宮を傷つけることは紅葉にも分かっていたはずだ。それでも口から出てしまった、いや、あえて吐き出したのは、篠宮が画家として成功していたこと、そして黒崎と今でも友達として繋がっていたことの両方に不意打ちされたからだろう。
紅葉からは孤独への恐怖とともに、自信の無さが伝わってくる。高校時代、黒崎を呼ぶ篠宮を見かけたとき。あのときの紅葉には、2人が友達になって嬉しそうな顔と、自分が選ばれなかったと感じた寂しそうな顔、でも自分には「もっと目立つ友達がいる」という気持ち、いろんな表情が入り混じって見えたが、もし紅葉が自分に自信を持っていたら、篠宮と黒崎に声をかけて3人組になることだってできただろう。
イラストレーターとしての自分にも、紅葉が自信を持っていたなら、有名画家のシノさんからのコラボレーションのオファーを知って、いくらジャンルが違うとはいえ、もっと嬉しそうにして良かったはずだ。
篠宮のほうにも多少なりとも紅葉への優越感があったはず。高校時代、紅葉に話しかけられ、嬉しかったのは本当だろうが、それが人気者からの同情によるもの、どこか下に見ている気持ちがあるのだろうといった思いはあったのではないだろうか。でも、そうだとして、自分の絵を本気で褒め、あのブランコでの思い出のように、誰も見ていない場所で、わざわざ一緒に絵を描いた紅葉が、特別な存在だったのは間違いない。
でも、紅葉のイラストがいいと思ったからではなく、同級生だからという理由でのコラボは紅葉にとって屈辱以外の何物でもない。サプライズは篠宮が思う以上に紅葉にダメージを与えた。ブランコの絵を篠宮が塗りつぶすシーンは、思い出を上塗りされた思いと同時に、自分も紅葉を傷つけたことも含まれた苦しみの筆だったのではないだろうか。
辛いシーンだったが、高校時代に紅葉が篠宮の絵を「すごいね、上手いね」と誉めたこと、黒崎を「仲良くなれると思うから」と紹介したこと、いずれも篠宮の今に繋がっているのは事実。すぐにでなくていい、「バイバイ」から、いつの日か紅葉と、篠宮、黒崎が再会できる未来が待っていてくれたら嬉しい。
そして触れられなかったが、紅葉に椿がいてくれて本当に!よかった。
さて、ゆくえと赤田(仲野太賀)、椿と純恋(臼田あさ美)、夜々と母(斉藤由貴)、紅葉と篠宮と、これまで別れを描いてきた物語とも言える本作だが、第5話でふたたび赤田が登場。さらに第6話の予告編でも赤田が登場するなど、何やら騒がしくなってきた。
さらに、これまでとても丁寧に、それぞれの個人の思いとともに、徐々に近づいていく4人と、育まれていく友情を見つめてきただけに、ほんの少し恋愛色が漂うだけで「え、マジで!」と思い切り心がザワザワしてしまうが、友情のみを描こうとするのも、無菌室に彼らを閉じ込めようとしているようなもの。ここにきて、友情ものに留まらない予感がしてきた。ならば、とことんザワザワさせてもらおう。
<文/望月ふみ>
望月ふみ
70年代生まれのライター。ケーブルテレビガイド誌の編集を経てフリーランスに。映画系を軸にエンタメネタを執筆。現在はインタビューを中心に活動中。
@mochi_fumi