そして、いよいよ試合開始。
「カーーーーン!!!」と会場全体に、ゴングが気持ちよく鳴り響きます。

相手は私の半分くらいの体重。そう、この大会は体重・無差別級。動ける巨木の恐ろしさを思い知っていただこう……!
会場の席は結構埋まっていたけれど、なぜか緊張しない。ステージ上だけがライトに照らされているので、思いのほか周りの状況が見えないのです。
暗闇の中に、リングだけが浮かんでいるような感覚です。そして人は見えないのに、声援だけ大音量で聞こえる。リングはライトに照らされてとても温かくてフワフワしていて。
「人生でこんな体験ができるなんて、滅多にないよなあ」と感動しているときでした。
相手の枕が目の前に飛んできて、とっさにガード。そして怪力(?)で叩き落とします。
危ない、試合中だった。

試合は90秒1ラウンド。意外と短いと思うかもしれませんが、人間って90秒全力で動き続けるとそうとうしんどいのです。膝から崩れ落ちそうなくらいの疲労です。

リングの上の90秒って、体感では「もう30分近く経ちましたよね!?」と思うくらいの疲労感と果てしなさがありました。そして結果は、90秒で判定ドロー! 決着がつかずに、唯一60秒の延長戦が行われることになったのです。