
今さら同情の余地はない。不倫の事実は明るみになり、妻には愛想を尽かされる。ボロボロ状態の夏生が家に帰ってくる。
家では、支援団体を装いながらもこれまで精神サポートに努めてくれた深愛をふみこが呼んで、ハルキと食卓を囲む。
この食卓も風変わりな光景ではあるが、ふみこにとってはけじめなのだろう。そこへハルキがもっとも恐れている付きまといモンスターにして幼馴染の尾崎ちふゆ(原菜乃華)が乱入する。
深愛めがけて振り回した怨恨の包丁を引き受けたのは夏生だった。横腹を刺され、倒れ込む。「バチが当たったんだよなぁ」と彼は言う。因果応報の結末を見て、ふみこは「そうだよ」と答え、優しく微笑む。

深愛とハルキの姿はバス車内にあった。当てどもなく揺られる。本作はどう締めくくられるのか。深愛はハルキを途中で下ろす。
もう誰も傷つけたくない……。そう誓った彼女はパラサイト不倫の病根を断ち切るため、すべてを一身に背負った。ひとり虚ろな表情を浮かべる深愛を見て、まるで“映画のような見ごたえ”だなと思った。
<文/加賀谷健>
加賀谷健
コラムニスト / アジア映画配給・宣伝プロデューサー / クラシック音楽監修「イケメン研究」をテーマにコラムを多数執筆。 CMや映画のクラシック音楽監修、 ドラマ脚本のプロットライター他、2025年からアジア映画配給と宣伝プロデュース。日本大学芸術学部映画学科監督コース卒業 X:
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