優先順位がつけられない場合の思考手順はどうなっている?
たとえば、忙しいからこそ仕事を頼んでいるのに、「もう終わった?」と聞いても「あ、これからやります」といった同僚がいれば、周囲から「要領が悪い」「段取りができてない」などと思われがちです。
でも、そうした人たちにネガティブな感情をもつ前に、「その人たちの思考手順はどうなっているのか」を想像することが大切だと、宮口先生は解説します。
「通常、複数の仕事を与えられる中、優先順位をつけることはとても大切です。仕事の重要性、締め切り、難易度、かかる時間など、いくつかの要素を総合的に考えながら先を見越して優先順位をつけて順にこなしていかねばなりません。それには『問題解決』の力が求められます。
しかし、境界知能の人は問題解決力が弱く、優先順位をつけるのが苦手であることが多いようです。そのため周りからは要領の悪い人、やる気のない人と見なされてしまうことがあります。
その結果、職場の人間関係もうまくいかなくなり、次第に会社での居場所を失っていき、職場を転々とする場合もあります」
相手の世界を感じ、強みを見つけてともに活かすことが大切

では、職場にひょっとしたら「この人は境界知能かもしれない」と思われる人がいた場合、周囲はどのような対応をするべきなのでしょうか。宮口先生は、こう続けます。
「まずは、本人の特性を理解し、本人に合った指示を出してあげる必要があります。そうすることで、本人もできることが増え、自信につながっていきます。
周りの人たちが本人の立場にたって境界知能のしんどさを感じることができれば、おのずとどう対応すればいいのかが見えてきます。そして彼らの気持ちに寄り添い、その強みを見いだし活かしながら、共に歩んでいきましょう」