北野武監督の大ヒット新作が描いた“男同士の同性愛”。加瀬亮の濡れ場よりもスゴかったのは
「殿、お逃げください」の意味合い
光秀は自分たちの絆よりも天下統一のほうが重いと言う。本能寺へ向かっていざ出陣するときは説得力があるが、戦況が悪くなってもなお、光秀は果たしてそう言えるのか。北野監督自ら扮する羽柴秀吉勢に圧倒され、光秀は敗走する。
敗走中、次々家臣は光秀をかばって敵に切られる。その瞬間、家臣たちは口を揃えて言う。「殿、お逃げください」。主を逃すためには、自分の命をなげうつこともいとわない。
家臣の忠義とは言え、主の人間そのものに惚れていなければそんなことできるはずがない。それが本作がテーマとする男色の本質なのか。構想30年。と言うことは北野監督が、大島渚監督による男色映画の傑作『御法度』(1999年)に出演する7年前くらいか。
その前後で構想を断片的にでも始めていたのだとすると、同作からの影響は明らかではないか。天下人になれなかった明智光秀の首をめぐる本作を、この「殿、お逃げください」の意味合いからもう少し検証し、考える必要があるように思う。
<文/加賀谷健>








