
※イメージです(以下、同じ)
――幼少期はどんな子どもだったのでしょうか。
はなゆい:忘れ物は多かったです。静かで、教科書を忘れても隣の子に「見せて」と言えなかったり、困りごとを口に出せないところがありました。
――思ったことを衝動的に口に出してしまう、ADHDの方に見られることがある「衝動性」とは逆のように感じますが、当時はなぜ困りごとを口に出せなかったのだと思いますか?
はなゆい:ADHDの「衝動性」は、基本的に自分のやりたいと思ったことを止められないというものなんです。だから、「やりたくない」と感じていることに「衝動性」が発揮されることはありません。
私は、先生に「早く隣の子に教科書を見せてと頼みなさい」と注意されると、緊張してますます話せなくなったり動けなくなったりしていました。性格的なものもあるかもしれませんが、これは発達障害の子に多い「パニック」の状態です。多すぎる情報や刺激を脳が処理できずフリーズしてしまっているんです。
――1話にも、娘さんの幼稚園のお迎え時、ママ友の集団を前に「何が余計な一言で、何が大丈夫なのか分からない……」とフリーズしてしまい、輪に入れない場面がありましたよね。
はなゆい:「パニック」というと大騒ぎするイメージですが、この状態は「静かなパニック」といわれます。体が動かなくなったり、周りの音や景色が遠くなっていく感覚があります。先生からの圧力や周りの目……子どもの頃の私はそれらを処理できずパニックになっていたんだと思います。
――困りごとを口に出せずにいたとき、先生に「やる気がない」と言われて傷ついたことが描かれていました。どんなふうに対応するといいと思いますか?
はなゆい:やる気がないわけではなく、「やる気はあってもできない状態なのかもしれない」という視点を持って、本人ができるようになる状態を探してもらえるといいと思います。
例えば「教科書を見せて」と言えない状態だったら、本人がパニックになっているので、それ以上刺激をしないのが一番です。先生から教科書を見せてあげるよう隣の子に頼んであげるか、先生が教科書を貸してあげるのがいいのかなと思います。
――高校受験の日に、時間を間違えて遅刻して不合格になったというエピソードが衝撃的でした。周囲の反応はどうだったのでしょうか?
はなゆい:私はものすごくショックを受けて、布団にくるまって出てこないみたいな状態になっていました。そんな様子を見て家族はなぐさめてくれていたと思います。先生も「滑り止めもあるし大丈夫だよ」と気遣ってくれました。
――ご家族は、はなゆいさんの困りごとについてどんな対応をしていたのでしょうか?
はなゆい:私の家族は、私ほどではないですが割と似たようなところがあるので、そんなに厳しく怒ることはなかったです。父親は仕事でいないことが多く、母親は子ども3人をワンオペで育てながら仕事もして、すごく忙しかったと思います。
自分が母親になって分かったのですが、掃除も料理も育児も完璧にこなしていました。そもそも私が発達障害ということを知らなかった訳だし、長女の私に関してはそこまで気にしてる暇がなかったと思います。ただ、私が赤ちゃんの頃はなかなか寝なくて癇癪や人見知りも酷く、「何か問題あるのでは……?」と思ったことがあると言っていました。