――義理の父からの性加害があってから、どんなことが辛かったのでしょうか。
魚田コットン(以下、魚田):自分が汚されているような感覚がありました。
義父がお風呂を覗いてきたり、体に触ってくるのは日常的というほどではなかったのですが、気を張っていると何もない日々が続いて「もう大丈夫なのかな」と気持ちが緩んだ頃にまた何かされて気持ちが荒れることの繰り返しでした。
中高生時代が1番辛かったと思います。男の人が怖いし、気持ち悪い存在になっていきました。
――大学時代に現在の夫になる方と出会ったとき、それまでの男性像とは違っていたのでしょうか。
魚田:夫はいわゆる「男らしい」タイプではなく気が優しい感じの人だったので私にとっては受け入れやすかったのだと思います。
――彼との初めてのデートで体調が悪くなってしまったのは、男性に対する恐怖があったのでしょうか?
魚田:緊張もありましたが、本当に体調が悪かったんです(笑)。でも気を遣って「体調が悪い」と言い出せませんでした。「不機嫌になられたらどうしよう」と怖かったんだと思います。
――世の中の性加害のニュースに対して、被害者を責めるような考え方をしていた時期があったと描かれていましたが、なぜだったのでしょうか。
魚田:男の人は女性を性的に見たり、品定めしたりするような人ばかりなんだから、「2人きりになったら性的なことをされるに決まってるじゃん」「されたくなければ2人きりにならなければいいんだ」という考え方をしていました。
私自身、「男性とは極力関わらないようにして身を守ってきた」という気持ちがありました。
でも、ネットで性的同意に関する動画(性行為を紅茶に例えたアニメーション『Tea Consent(紅茶と同意)』)を見て、やっと自分は悪くなかったし加害者が悪いんだと思えるようになりました。
――魚田さんが「スカートの呪い」から解かれて、履けるようになったのはいつ頃からでしたか?
魚田:夫と結婚してからです。結婚したことで異性から女として見られなくなったし、私が夫という後ろ盾を得たと思ったのか、義父が一切触ったりセクハラ的な発言をしなくなりました。
「偉そうにしていただけで、こんなちっぽけな存在だったのか」と気づいたことが1番の理由です。
昔は好きな服を着ると、母に「何その服ダサい」と言われたりしましたが、今は肯定してくれる夫しかいないので何も気にせず着られるようになりました。
子どもを産んで歳をとることで、ますます気持ちが楽になっています。スカートを自由に履けるようになったことで、改めて自分はパンツスタイルや、ちょっと個性的な服装が好きなんだと自覚しました。30歳超えたくらいから「人生楽しいな」と思います。