有力な手がかりとなったのは、融資課の先輩だった根津京香(栗山千明)のあるクセだ。支店勤務時代、舞を呼び出すとき、根津は手書きのメモを渡していた。そのメモに書かれた「御願いします」でピンとくる。
手がかりとなる文書にも「御願いします」とあり、舞は、「お」をわざわざ「御」に変換するのは、根津しかいないはずだと推理する。そうとわかれば、直接確認。その場面がなかなか面白い。
変換のクセを指摘する舞は、「ここ、漢字で書く人、今どきなかなかいなんで、昭和っぽいっていつもつっこんでたんですけど」とストレートにバッサリ。「そんなことで」と鼻で笑う根津に対して、舞が食い気味の「はい」。間髪入れずに迫る舞の性格はキツい。単にキツいだけでなく、今田が演じると、さわやかなキツさとなる。
このさわやかなキツさが、花咲舞というキャラクターの行動原理になっている。不正に気づいたら、すぐ行動。おかしいことはおかしい。これは指摘すべきかどうか。なんて考えない。
考える前から、口をついて正当な言葉を繰り出す。だからキツい。無意識のキツさだ。ある意味、機械的ではあるが、その分、精度はいい。だったらいっそのこと、不正取締役サイボーグにでもしたらどうかとも思うが、そういうことでもない。
生身の今田が演じることで、トライアンドエラーを繰り返す主人公の心の成長物語でもある。『不適切にもほどがある!』の阿部サダヲのような明らかな人情肌とは違い、きちきち不正を取り締まる機械的な性格と人間としての等身大の感情が、次第に同期する様子が面白いのだ。