
一昔前は、結婚して家庭を築いたからには家を買う、というのがほぼ常識になっていたように思います。一生住める持ち家があると、精神的にも安心できるのかもしれません。
近年は事情が異なり、度重なる震災や回復する兆しのない景気など、家を買ってもローンだけを支払い続けるというリスクも無視できなくなりました。
それでも、子供達や飼い猫が悠々自適に過ごせる広い家がほしい。将来、子供達が孫を連れて帰省できるあたたかい家があったら。こんな未来像にも憧れますよね。アベさんご夫婦は綿密に計画を立て、実行に移しました。
広いリビング、広いバスルーム、広いバルコニー。ドラマに出てきそうな優美なマイホーム。ローンも無理なく組めて、東北の田舎とはいえ環境も決して悪くはありません。マイホーム信奉者からは疑問しか浮かばないでしょう。では、何がアベさんご一家のマイホーム熱を冷ましたのでしょうか。
一軒家を建てたらガーデニングを趣味にして、家族そろってBBQを楽しむ。これぞ絵にかいたようなハッピーライフ。とはいえ、広い庭は維持するのも大変です。
雑草は生え放題、虫は飛び放題。キレイを保つためには毎日のお手入れが欠かせません。しかも地続きですから、さまざまな害虫もけっこう家に侵入してきます。
草むしりや害虫駆除を家事のルーティンで組み込んでしまえば、じょじょに慣れてきますが、アベさんご夫婦は共働き。子供もまだ小さいので、家事や雑事にさく時間は限られているのです。
広いリビングに広いバスルームも、光熱費が割高になる、というまさかの事態に。ゆったりした空間は身も心も解放されて、過ごしやすくはあります。しかし冬場は部屋が暖まるまで時間がかかり、夏場はその逆。アベさん宅は東北なので、真冬をしのぐために暖房機器の増設は必須になりました。
さらに広いスペースだからこそ、物が散らかってしまうという本末転倒な事態にも。子供が伸び伸び遊べるのはいいのですが、理想と現実のギャップは案外悩ましいのです。