本書には「戸建て物件事前チェックリスト」が載っています。項目は以下のとおり。
・広々として大きなおウチ
・花咲く広い庭でガーデニング
・リビングから出られるルーフテラスでバーベキュー
・開放感たっぷりの吹き抜け空間
・自然光あふれるたくさんの大きな窓
・子育てしやすいのどかな土地
すべての項目がもう「夢のマイホーム♡」という印象しかないのですが、実際に住んでみると、デメリットという「現実」がおそってくるのです。
たとえば「広々として大きなおウチ」は、単純に掃除の手間が増えます。家はもちろん、庭・テラス・駐車場の掃除やメンテナンスも加わり、出費も加算されるのです。
「子育てしやすいのどかな土地」も、穏やかで魅力がありますが、自治体(町内会)の実態など、その土地ならではの規則があります。近所付き合いが苦手な人は、けっこう面倒くさいかもしれませんよね。
家族構成や夫婦の仕事やライフスタイルを考慮しつつ、マイホームを買うのははたして「今」なのか。あるいは賃貸でまかなったほうが暮らしやすいのか。夢と現実を天秤にかけて、冷静に判断すべきなのでしょう。
憧れのマイホームを建てる、夢と現実の狭間で揺れる、そして葛藤、やがてマイホームを手放して賃貸生活に戻るまで。ことの成り行きを詳細に綴った本書は、家族全体や夫や子供、自分を見つめなおす機会を与えてくれます。
世間の常識や夢や憧れよりも、家族の幸せと暮らしやすさが第一。私達も本書とともに、家について考えてみませんか。
<文/森美樹>
森美樹
小説家、タロット占い師。第12回「R-18文学賞」読者賞受賞。同作を含む『
主婦病』(新潮社)、『私の裸』、『
母親病』(新潮社)、『
神様たち』(光文社)、『わたしのいけない世界』(祥伝社)を上梓。東京タワーにてタロット占い鑑定を行っている。
X:@morimikixxx