夜中、ゆみが確かに聞いたと思った鈴の音。翌朝、夫にたずねてもとぼけるばかり。夫の目の前でクローゼットをあけても、特に変化はなく、いつものクローゼットです。
ゆみが夫を問い詰めるも「気のせいだろう」と夫はスルー。当然、ゆみも気のせいだと思いたい、でも、部屋の空気の異様さに、ゆみの疑念はますます深まるのです。
悶々(もんもん)とした日々は、意外な形で終焉を迎えました。夫の正体は、実は…。
ストーカー、浮気。物事の本質は、もしかしたらそこにあるのではなく、その奥にひそんでいるのかもしれません。おかしいのは誰なのか、自分なのか彼なのか彼女なのか。
本書を読むと、遠くにあると思えた犯罪や問題行為が、実はすぐそばで行われていると実感します。
ヒバリ、ゆみ。真実にたどり着いたふたりが、今後どう生きていくのか。あなたの目で見届けてみてください。
<文/森美樹>
森美樹
小説家、タロット占い師。第12回「R-18文学賞」読者賞受賞。同作を含む『
主婦病』(新潮社)、『私の裸』、『
母親病』(新潮社)、『
神様たち』(光文社)、『わたしのいけない世界』(祥伝社)を上梓。東京タワーにてタロット占い鑑定を行っている。
X:@morimikixxx