彼がデートを中止したい理由は、私の格好が気に食わないからでした。加えて髪型も気に入らない。それどころか
日本人らしい体型も、低い身長すら好きじゃないと言い出しました。足早にどこかに向かいながら、携帯電話の画面にパリコレモデルの写真を出し、私に見せて「どうしてこうなれないの?なれなくても近づく努力くらいしなよ」と言いました。
そのあとは、「
一緒にいるところを誰かに見られたくない、恥ずかしい」と私をラブホテルに押し込み、やることやって解散。
ホテル代は割り勘です。今思えばモラハラを超えてサイコパスっぽさすら感じますが、当時はまだどちらの言葉も知りませんでした。
それまで彼が私の容姿を否定することはなかったように思います。ただ、読んでいただいたとおり、彼は影響を受けやすく、なりたいものがコロコロ変わる人間。誰かの立ち振る舞いを見て「かっこいい!」と思い、モラハラ男になってしまった可能性もありますし、きっと私が甘すぎたのも原因です。

画像はイメージです
そしてアパレル業界のことを調べ始め、モデルやコレクションなどを見るようになり、彼の中で私は「俗物」から「ダサい俗物」へと進化したのかもしれません。
ここで私が学んだのは、
容姿を否定し始めたら終わりだということ。恋人の容姿を否定するのは、どこかに「変わってほしい」という願望があるからです。実際、彼も、容姿が理由で私をフるまでにはいたりませんでした。
大人になってからわかりましたが、他人を変えることなんてほぼ不可能。恋人に変わっていただくか、恋人を替えるしかないと思います。そして「他人を変えようとする」というのはモラハラ人間の特徴の代表格ではないでしょうか。人を物扱いすることは彼らの専売特許ですから。
恋愛中はいろんなものの解像度が悪くなってしまいますが、モラハラの疑いがある男と付き合ってしまったときのひとつの指標として、お役に立てれば幸いです。できれば、お役に立てないままでありますように。
<文/七尾紫 イラスト/織田繭>
七尾紫
元・恋愛体質のフリー編集者。ダメ男に好かれてしまう特異体質を持つ。DVと不倫以外は大体やられている