――なぜ慰謝料請求が認められないのでしょうか?
「日本では重婚は認められないので、既婚者の方と結婚を前提にした交際は想定されておらず、
『今の奥さんと離婚をしてあなたと結婚をする』という約束は無効であると考えられます。結婚を前提とした交際がない以上、信頼を裏切られたとしても貞操権に基づく慰謝料の請求はできないということになります」

――では、もしお相手が結婚していることを知らなかった場合はどうでしょうか?
「そうですね、例えば、相手が既婚者であるのを隠して交際していて、
途中で相手方が既婚者だということが発覚した場合、請求できる可能性はあります。
ただ、既婚者だということを知らなかったというのも、裁判所の認定は厳しいんですよ。指輪をしていなかったからとか、彼女がいるかどうか聞いたことがあるくらいだとダメなんです。『相手が独身だと言っていて、実際に結婚しようという話を積極的にしていた』くらいの事実がないと難しいんです」
肉体関係を持ったら逃げられた! 相手のことを訴えられる?
――既婚者ではなくお互い独身で、付き合い始めたけど体の関係を持ったら急に連絡が途切れてしまった場合はどうでしょうか? こういった相談、けっこう受けるんです。貞操権侵害で訴えたら、認められますか?
「それは、相手との交際が結婚を前提とした真剣な交際であったかによりますね。交際していたが
結婚を前提にしていたわけではない交際では難しいでしょう」
――そうなると、恋愛関係で訴えて認められるって、かなり難しいことなんですね。
「必ずしもそうとは限りません。精神的苦痛を受けたことが立証できれば、貞操権侵害に限らず一般的な慰謝料請求をすることができます。ただこのような請求は事案によって見立てが大きく変わるため、専門家に相談されるのが良いと思います」