「お笑いは習い事の感覚に近かった」まえだまえだ弟・前田旺志郎が俳優の道を志したきっかけを語る
2007年に兄・前田航基と「まえだまえだ」を結成し、なんとM-1グランプリの準決勝まで進出してしまう。当時小学生だった前田旺志郎は、コンビ結成前からすでに子役としてキャリアをスタートしている。
芸歴は20年。そんな節目に出演した映画『からかい上手の高木さん』が、5月31日から全国で公開されている。主演の永野芽郁と高橋文哉のかたわらで、島育ちの快活で闊達な青年を好演している。
イケメン研究をライフワークとする“イケメン・サーチャー”こと、コラムニスト・加賀谷健が、本作の前田旺志郎さんにインタビュー。本作で浜口役を演じた感想や「究極の芝居の境地にいた」と話す過去作について聞いた。
――ラブコメ漫画を原作とするいわゆる“きらきら映画”を久しぶりに楽しんだ気分です。『愛がなんだ』(2019年)の今泉力哉監督の演出力もあり、2020年代仕様の新鮮なラブコメ映画という感じでした。
前田:まっすぐな感情の動きでピュアに演じられた気がします。自分が演じてる楽しさを感じられました。小豆島ロケで、同世代のキャストが集まる。休憩時間やオフの時間にはみんなで団欒。フレームの外でも青春でしたね。
――島でのオフ時間は何か面白いことがありましたか?
前田:島をまわっていると、「これ、めっちゃおもろい!」と思ったことがあります。100円ショップに鮮魚が売っていたんです(笑)。
――え!?
前田:100均といってもなんでもあるんです。その中にパック詰めされた鮮魚が売っていて、スーパーと100均が合体したようなお店でした。どこにいても海が近い島ですから。東京ではありえないことですよね。
僕が演じた浜口は、根っからの島育ちです。浜口だけでなく同級生のほとんどが町から出ずに大人になっていきます。隣町もありません。大人になっても同じ顔見知りがずっといるこの雰囲気は、特別だなと思いました。
――浜口の初登場は、同級生たちが集まった居酒屋場面です。ピントはあっていませんが画面手前に浜口がいるとすぐにわかります。キャラクターを瞬時に把握できるような初登場のワンショットだなと思いましたが、キャラクターを掴む工夫を教えてください。
前田:初見では、なかなか理解できないカモと思う役柄も時にはありますが、でも、普段生活していると「いや、嘘やん」と驚かされる人が意外とたくさんいます。
こんな人いるはずないと思ってしまうと、どうしても自分の芝居と役との間に距離が生まれてしまいます。自分とのギャップがある役でも、現場に入るときはなるべく疑わず、ちゃんと愛情を持って接する。
そこから新しい情報がいろいろ出てきて、こういう人もいるなと思えると、距離感はギュッと縮まります。最近はどれだけその役を信じられるかを大切にしています。
――日常レベルでも先入観で「あの人はこういう人だ!」と決めつけてしまうと、その人の性格や魅力を限定してしまいますね。
前田:そうですね。お芝居の中のリアルと現実のリアルは違いますが、お芝居だから限定していいわけではありません。いろんな可能性を探って、思考を止めないことが大事だなと思います。
――浜口との距離感はどうでしたか?
前田:すごい近かったです(笑)。僕も学生時代、おちゃらけキャラで、近い部分がありました。
でも僕は島育ちではありませんから、生まれ育った環境に大きな違いがあります。脚本の中のヒントを掴みつつ、キャラクターと前田旺志郎のアイデンティティを近寄らせ、接点を見つけ、たぐり寄せる感覚でした。

まっすぐな感情の動きでピュアに演じられた
どれだけその役を信じられるかを大切にしている
