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私って発達障害?→“毒親育ちのトラウマ”による症状だと判明。でも生きるのがラクになった理由

 幼少期に受けた虐待や性被害など、過去の傷(トラウマ体験)を心や体が覚えていることによって、大人になっても心身にさまざまな症状が現れる「トラウマ関連疾患」。その治療について書かれた、精神科医・生野信弘先生の著書『トラウマからの回復』が2024年5月30日に発売されました。
『トラウマからの回復』(扶桑社)

『トラウマからの回復』(扶桑社)

 本書では、トラウマ疾患を抱える当事者への取材をもとにした架空の患者「ハナ」の視点から、治療の様子や日常生活での思考の変化を追いながら、トラウマ関連疾患やその治療について、わかりやすく解説されています。  今回は、父親からの暴力や性的虐待に苦しんだ過去や、トラウマと対峙した経験をコミックエッセイ『母が「女」とわかったら、虐待連鎖ようやく抜けた』(竹書房)などに描いているあらいぴろよさんに、自身のトラウマ治療の体験や、本書の感想聞きましした。

自分の中で反芻したい“温かな言葉”が山盛りの本

――本書について、どんな感想を持ちましたか? あらい:私自身、1年半ほど前からトラウマ治療を受けているのですが「自分の中で反芻したい」と感じる温かな言葉が山盛りの本でした……! あっという間に読破してしまいました。 情報のバランスがよく、トラウマ治療に興味を持っている人が知りたいことが詰まっています。例えば、治療に漢方薬が用いられることが紹介されているところです。精神科で処方される薬に対して怖いイメージを持っている人は多いかもしれないですが、「漢方だったら試してみようかな」と思える人もいるのではないでしょうか。 また、治療を始める前は、先が見えない不安があるのですが、この本を読むことで何となく“ゴール”や“区切り”をイメージができるところもいいですね。治療中はつらい過去を思い出す中で、苦しくて逃げ出したい気持ちになることがあります。私自身、治療の効果をまだ感じられない段階に「どうせ治療しても苦しいなら、何もせずに鬱々と暮らしていればよかった」と思ってしまうつらい時期がありました。それは、治療の終わりが見えないことが一因だったと思います。 この本では、ハナは人が変わったように劇的にハッピーになるわけではないけど、いろいろなことに気づき、自分の人生を生きる覚悟が決まるような気持ちになって、“静かに”治療が終わっていくという1つのケースが書かれています。この“静かに”というのがまさに私自身が体験したことでした。治療が終わっていくところが見えるのは、当事者にとって希望になると思います。 ――エピソード部分はハナの治療の様子が医師との会話形式で描かれていますが、この点についてはどう思いましたか? あらい:他人がカウンセリングを受けているところは滅多に見ることができないので、この本を読んで、「カウンセリングってこういう感じでいいんだ」と感じられるのではないかと思います。

「カウンセリングあるある」に共感!

――ハナと医師のやり取りで、印象に残ったことはありますか? あらい:まず、この先生はすごくいい先生ですね!(笑)こういう先生ばかりではないのが現実だけど、「こんな先生もいるんだ」と望みが持てると思います。やりとり全体を通して、著者の生野先生の「自分のことを見失わないでね」というメッセージが込められていると感じました。また、作中の先生が、ハナが自分で気づけるように「こういう考えもあるよ」と少しずつ助言してくれる様子は、読むだけで気持ちが落ち着く人がいると思います。 ――ハナについはいかがでしょうか。 あらい:ハナが先生に少し突っかかる場面など、「あるある!」と思いました。ただ実際には、カウンセリングで先生に言われたことに対して「それってどういう意味?」と思ったとしても口に出せなかったりするんです。でも、ハナは思ったことをちゃんと先生に言ってくれるので、自分にはできないことを疑似体験できるし、「カウンセリングでは本当に何を話してもいいんだよ」という見本になっていると思います。 ――あらいさん自身も、そういうことがあったのでしょうか。 あらい:治療に来ているはずなのに、お医者さんが求めていそうな返答をしてしまったり、話したいことがあったはずなのに、いつもの癖で「大丈夫っす!」と元気なふりをしてしまったり……。病院に行くときは気合が入っているので、つい大丈夫だと思ってしまうんですよね。 患者側としては、ハナみたいに最初から心を裸にしてカウンセリングを受けられたらいいなと思います。そこに少し付け足すとしたら、話したくても体が固まったり涙が溢れたりで声を出せなくなることがあるので、話したいことをメモしておいたり、先生に手紙を書いていって「これだけ読んでください」と渡してもいいと思います。 また、希望の治療法があれば積極的に伝えることが大切です。自分の体・心に合うものを探す旅のような気持ちでいられればベストですね。
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「ハナ頑張ってるやん!」
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『トラウマからの回復』(生野信弘・著)

ミスが多い、集中力が続かない、癇癪を起こす、先のばし癖……
もしかしてその裏には「トラウマ」が隠れているかもしれません。
過去を変えることはできませんが、治療をすることで生きづらさを抱える現在、そして未来を変えていくことは可能です。
同書ではトラウマにより現れる症状や治療法、そして回復までの過程を分かりやすく解説。自分や身近な大切な人が症状に悩んでいる…そんな人にとっても入門書となる一冊

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