ロイスエンタテインメント 廣瀬勇一社長
──ではもともとは御社発信のサービスではなく、お客さんの要望に応えて作ったという経緯だったのですね。
山岡:実はそうなんです。
廣瀬社長:正直に言うと、最初はご依頼をいただいてもお断りしていて……。というのも、故人を立体化するにあたり、技術的なハードルがさまざまあるためです。まず、ご存命の方のフィギュアを作るにはご本人の身体をスキャンしてデータを取るのが基本的な製作過程ですが、故人の場合それができないので、お写真を元に作ることになります。
ご遺族から借りたお写真を元に作ることもできますが、撮られた時期や表情もバラバラだったりするので、正確なデータを取るのが難しいだろうということは、サービスを始める前から懸念していたので、気軽には始められませんでした。
しかし、「どうしてもお願いしたい」と熱量の高いご要望に押されるかたちで始めると、多くの方が喜んでくださったので、続けて今に至っています。こちらも可能な限り故人の在りし日に近いかたちで仕上げたいので、「できるだけさまざまな角度から撮影した複数枚の写真をご用意いただく」「正面のお顔が映った写真は必須」「手振れやピンボケが無いお写真で」などの注意事項を事前にご案内したり、3Dデータの段階でご確認いただくようにしています。
──実際にサービスを行ってみて分かったこととして、どんなことがありますか?
廣瀬社長:人間は亡くなった方をイメージで捉えていて、正確な見た目を覚えていないケースが多いということですね。遺された人の記憶にある故人の姿と実際のギャップがあることもしばしばで……。「こんなんじゃない」と言われても、こちらはご提供いただいたお写真のとおりに作っているので、困っちゃうんです(笑)。
そういう意味で遺人形は、実際の見た目よりも、ご依頼者様のイメージに近いかたちに仕上げることが優先されるものなので、製作段階でしっかりとヒアリングすることが大切ですし、3Dデータの段階でご依頼を受けて何度も修正することもあります。そういった場合、長くて3~4か月かかりますね。
──キャラクターや存命の人物フィギュアよりも技術的なハードルが高いうえに、依頼者も特別な思いを抱いているぶん難しさがあるのですね。ビジネスとしてのメリットはいかがなのでしょうか。
廣瀬社長:正直、商売としてはかなり厳しいものがあって、ある意味では利益度外視で続けているサービスと言えます。