キャスターの横でうなずきすぎる女子アナ、桑子真帆のうなずき力
ニュース番組を観ていると、原稿を読み上げるキャスターの隣でもう一人のキャスターが表情を作りうなずいていることに気が付きます。それが深刻なニュースならば軽く眉間にしわを寄せつつ、重々しくうなずく。明るいニュースならば、おふざけに取られない程度の笑顔とともに相槌を打つ。
このことでニュース番組にグルーブ感が生まれ、ある話題に対して視聴者の取るべき姿勢をあらかじめ設定するような効果が生まれるわけです。それも度が過ぎると危険。視聴者を一定の方向へと誘導しかねません。しかし昨今のニュース番組は、みんなこの調子です。
そんな傾向に一石を投じたのが、お盆期間中のNHK『おはよう日本』に出演した桑子真帆アナウンサーでした(広島放送局所属)。男性キャスターのわずかな読点や息継ぎの合間も逃さずうなずき続けることで、ニュースから不必要な感情を拭い取ったのです。
もちろん『おはよう日本』は看板番組ですから、入局間もないアナウンサーにとって憧れの的であることは想像に難くありません。そこで普段よりも一段ギアを上げたくなることもあるでしょう。キャリアの浅い若手アナウンサーならなおさらのこと。
ですが、何に同意しそこから何をうながそうとしているのかが分からなくなってしまうほどにうなずきを乱打した桑子アナのケースはそれとも違う様子です。男性キャスターが動詞も目的語も読んでいない段階で確信に満ちた表情で相槌を打つことは、尋常ならざる事態です。
しかし文意が確定していないのにうなずかれることで、その小芝居じみた演出によって生まれるはずだったグルーブが途切れます。すると単なる事実の報告に過ぎないというニュース本来の姿が復活するのです。いささか倒錯してはいますが、桑子アナの無意識が生んだファインプレーだったかもしれません。
ところで、この桑子真帆アナウンサー。実に美しいのです。
若い女性アナウンサー特有の前に張り出してくるドライさではなく、引きの美しさが湿っています。その昔、ファブリーズのCMに出演していた水沢蛍のように、どこか遠くを見つめる青白い色気がある。
そんな桑子アナだからこそ、あの無意識と思しきうなずきの連打が可能だったのでしょうか。自己主張が強く「私は仕事ができます」とでも言いたげなアナウンサーが強弱をつけたテクニカルな相槌をたたみかけてきたとしたら、それは糾弾されるべき事態です。しかし桑子アナの場所を選ばないモノトーンのうなずきには、その種の積極性に生じる意味が感じられません。
アナウンサーとしての自分を大きく見せるためだとか、仕事に対する真摯さをアピールするためだとか。そういったうっとうしい向上心とは無縁のところで、一旦こくりとやったら止まらなくなってしまっただけなのではないか。その慣性がなんとも微笑ましく、ニュースの内容そっちのけで心和むものでした。
そこでNHKにひとつご提案。桑子真帆アナウンサーのボブルヘッド人形を作ってみてはいかがでしょうか。子ども向けバラエティ番組「ワラッチャオ!」(BSプレミアム)のお姉さん役で着ている衣装ならば、そのままキャラクター化できそうですし。
<TEXT/沢渡風太>