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朝ドラ『虎に翼』39歳俳優の“一瞬の手の動き”がスゴい。駆け足な展開でも決してブレない演技

テレビの中の等一郎

『虎に翼』© NHK 誰よりも頑なで、動かない岩のような存在感を保っている。しかもそれが演技レベルで硬直することはなく、どこまでも映像的な柔軟さを伴う。こんな手品みたいな不思議ができてしまう。  するとどうだろう。第24週第116回、ついに最高裁判所長官にのぼり詰めた等一郎が、テレビカメラに囲まれる。向けられたマイクに「裁判官は激流の中に毅然と立つ巌のような姿勢で」と就任後の意志も変わらずに固い等一郎。  その映像を星家の食卓からテレビ越しに見つめる寅子は「よっ!」と誇らしげに拍手する。所長室で少し距離を置いて向かい合っていた寅子が、今度はテレビの中の等一郎を見つめる。  見る、見られるの距離の描き方が物理的に拡大される面白い場面だが、この物理的な距離が寅子との心の距離になってしまうのか。  本作はクライマックスへ向けて、戦後の課題に対して現代史の授業みたいなスピード感で速度を早めている。どこまでも映像的な松山が演じる桂場等一郎がテレビの中の人となった今、桂場長官の肩に戦後の課題が重くのしかかるかもしれない。 <文/加賀谷健>
加賀谷健
コラムニスト/アジア映画配給・宣伝プロデューサー/クラシック音楽監修 俳優の演技を独自視点で分析する“イケメン・サーチャー”として「イケメン研究」をテーマにコラムを多数執筆。 CMや映画のクラシック音楽監修、 ドラマ脚本のプロットライター他、2025年からアジア映画配給と宣伝プロデュース。日本大学芸術学部映画学科監督コース卒業 X:@1895cu
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