――窃盗に依存する人もいるのですね。人のものを無断で使い、返してくれない人がいて、困った経験があります。
おおたわ:クレプトマニア(窃盗症)も依存症の一種で、生きづらさを感じている人が、それを埋めるために人のものを盗ってしまうと考えられています。お店で万引きするほかに、学校内や会社内で盗みを繰り返すような人もいます。証拠があっても本人が認めなかったり、治りづらいと言われていて、クレプトマニアだけを専門にする先生もいるくらい。
治療は一筋縄ではいかないかもしれませんね。日本は、病的窃盗で繰り返し刑務所に入ってくる人が男性も女性もすごく多いです。

おおたわさんと、筆者(左、大日方理子)
――おおたわさんのお母さんは、「もう薬物を渡さない」と宣告したら、今度は買い物依存症になってしまったわけですよね。テレビ通販で物を買いまくって、開けもしない段ボールで部屋がいっぱいになって。
おおたわ:そうなんです。依存症というのは、普通に生きることが苦しい人たちが、生きにくい暮らしや社会の中でなんとか生きていくための「自己治療」だと言われています。お酒の力や、ギャンブルの力なんかを借りて生きているんですね。だから、依存の対象を取り上げたり、やめるようにたしなめたりすることで依存症がかえって悪化することがあるんです。
最近の考え方としては、法的に問題がある薬物やアルコールを飲んで暴れるとかでなければ、依存症が全て悪いものと決めつけずに、緩やかに減らして依存と付き合っていく「ハームリダクション」という治療法があります。今は依存症の専門医もいますし、専門施設も相談できる機関もあります。依存症の根底には生きづらさがあるという、社会の理解がもっと広がるといいなと思っています。
【おおたわさんインタビュー、1回目を読む】⇒
「おまえは醜い」「消えろ」…母に否定され続けた私が、自己肯定感を取り戻すまで
<取材・文/大日方理子 撮影/山田耕司>