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朝ドラ『虎に翼』ラストに向けて完全に“キャラ崩壊”した人物。顔芸は大ヒット民放ドラマのよう

人生初の道化役

『虎に翼』© NHK 振り返った勲からたしなめられた春彦は、放心状態ではありながら、どこかつきものがとれたかのように、スッと落ち着く。さっきまでの怒声や怒号より、落ち着きを取り戻した演技の方が絶対にいい。岡田将生とは、何より静謐(せいひつ)な瞬間でこそ、最良の演技を発揮する俳優だからだ。 『虎に翼』の航一役は、それこそ静謐そのものを極めた最良の実践例だった。第24週時点ですでに還暦を過ぎているのに、全然老けて見えず、まるで春の空気に漂う霞を食べて生きているような繊細さの極地にまで到達している。それをわざわざ半沢直樹的な顔芸で破壊する必要があるのだろうか?  すると週が明けた最終週第126回で、寅子を励まそうとする航一が、これまた人生初の道化役を買ってでようとする。いつものようにウイスキー片手にしっぽり飲んでいたかと思ったら、寅子の前に立ち、右腕を前方へあげて「チチンプイプイ」。  こりゃなんだ。道化というか、桂場に怒声を浴びせて以降の航一は、完全に壊れてしまっている。ミステリアスな「なるほど」が安定させていた存在感を脱構築するというのか、この最終週では、徹底的に破壊していこうという方向性なのだろうか? <文/加賀谷健>
加賀谷健
コラムニスト/アジア映画配給・宣伝プロデューサー/クラシック音楽監修 俳優の演技を独自視点で分析する“イケメン・サーチャー”として「イケメン研究」をテーマにコラムを多数執筆。 CMや映画のクラシック音楽監修、 ドラマ脚本のプロットライター他、2025年からアジア映画配給と宣伝プロデュース。日本大学芸術学部映画学科監督コース卒業 X:@1895cu
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