気持ちはまだ若いのに、体はそれなりに老いていく。60代が感じるのは心身のギャップ。着たい服と似合う服がズレてくるのも、しかたないとはいえ切ないもの。
青沼さんはこっそり、アンさん(娘さん)の服を借りているのだとか。女性の服は若い方向けのほうが色合いも鮮やかですし、デザインも可愛いです。
でも歳だから……、なんて本当は無視したい一般論に毒されて我慢してしまうのは、かなりもったいない。
「遊び心で、たまーに派手な服を着ると気持ちも華やいだりする」と本書。ファッションも悩むよりまずトライ。
青沼さんはアンさんの許可は得ているそうですが、借りた後は洗濯または消臭剤をかけて干すなど、マナーは厳守しています。
年を重ねたからこそ着たい、赤やピンク、花柄やフリルの服など。オシャレ心というのは、年齢不詳なのかもしれません。
夜になれば就寝して、朝がくれば起床する。こんなあたりまえの日々に亀裂が入るのも、60代ならでは。
ある朝、青沼さんは股関節の激痛に襲われました。原因はどうやら筋肉の衰え。
運動が大事、ストレッチは必須、世の中は相変わらず筋トレブーム。日常の些事にかまけて、運動の時間は後回し。こんな60代、いえ、60代でなくとも、多いのではないでしょうか。
耐えに耐えてきた股関節が悲鳴を上げ、青沼さんも一念発起。鍼、バランスボール、水中ウォーキング。人づてに聞いた、効果がありそうなものを片っ端から試したのです。
このフットワークの軽さも、ある意味、元気の秘訣でしょう。ちなみに水中ウォーキングは「週に1~2回」。1ヶ月経過した頃から股関節の痛みが軽減したのだとか。
筋トレブームもあながち嘘でも大げさでもないのです。熟年者から老年者へ、オシャレ心を保ちつつ、筋トレに励む。
まだまだ若い、でも時々年相応?な年代を駆け抜けるべく、もがいて笑って今日もがんばる。本書にならって、私達も輝く60代を目指そうではありませんか。
<文/森美樹>
森美樹
小説家、タロット占い師。第12回「R-18文学賞」読者賞受賞。同作を含む『
主婦病』(新潮社)、『私の裸』、『
母親病』(新潮社)、『
神様たち』(光文社)、『わたしのいけない世界』(祥伝社)を上梓。東京タワーにてタロット占い鑑定を行っている。
X:@morimikixxx