「もう、教壇の周りは人だかりができていました」
スマホを操作していた生徒の1人が画像フォルダを漁り始めます。ひたすらスワイプして写真を見ていたとき、一枚の写真に目が留まりました。

(不良生徒が撮ったスマホ画面/写真提供リンさん)
切れ長の鋭い目尻とひょろっとした細長い胴体の若い女性の写真で、それは明らかに先生の若い時の写真です。
「特攻服に派手な化粧の強面の女性が、ヤンキー座りをして、斜めから見上げるように睨みつけている写真だったのです。一目で吊り目ごぼう先生だって分かりました」
生徒から舐められている吊り目ごぼう先生はかつて、レディースの暴走族だったのです。両脇には同じようにキツい化粧をした特攻服姿の女性をずらりと従えています。きっと暴走族集団の中でも上の立場だったことが伺えます。
さらにスライドしていくとどれも凄みのある写真ばかりが並んでいます。段々と怖くなった生徒の1人が「もう閉じた方がいいよ」と忠告します。ざわめいていた教室内はいつの間にか静まり返っていました。
その時、ガラガラッと教室の扉が開きました。驚いて振り返ると、そこにはスマホを忘れたことに気が付いた先生が立っていたのです。