――社員にヴィレヴァンらしさの教育ができていなかったことも要因の一つだと言われています。店員さんの個性やオリジナリティにも変化が見られるのでしょうか?

ヴィレ全さんが昔仙台のヴィレヴァンで購入した「ブッダマシーン」。「電源を入れるだけで徳の高い仏教ソングが流れる激アツマシンです」
ヴィレ全「全国のヴィレヴァンをまわっていると、
社員や店員さんはサブカルの知識をもっている方が多いと感じます。譲れない趣味や、個性的なものが大好きな店員さんもたくさんいます。でも今の時代、店員さんの『趣味・嗜好』だけで商品を仕入れて、本当に売れるかという問題があります。
昔のように業績が良くて会社に余裕があれば、仕入れも自由にできたと思います。その結果、『なんで、こんな商品置いてあるの?』『これ、だれが買うの?』と笑えるコアな商品がたくさんお店に並べられていました。でも今は、その余裕がなくなってしまい、店員さんの個性が出しにくくなっていると思います。
個性があっても、それを発揮する場所がない。仕組み的な問題も大きいと思います」
――個性があっても発揮する場所がないのは辛いですね……。
ヴィレ全「昔は、店員さん一人一人がとんでもない趣味や知識を持っていて、その方の権限で商品を仕入れていました。仕入れた商品の魅力を余すことなく伝えたくて、店員さんが自分のプライベートの時間を使って、さらに知識を磨いたり、趣味の延長でポップを描いていたんです。
基本的に店員さん個人の『好き』という気持ちで、店舗の個性が成立していました。それをだれかが教えるのは少し違うかな、という気がします。好きでやっていることですからね。
あとは、昔のヴィレヴァンの雰囲気をよく知っている、ベテランの社員や店員さんたちが退職されてしまった、というのも大きいと思います。人手不足や労働環境の変化などもあると思うのですが、結果的におもしろい店員さんが少なくなってしまったのは大きな痛手ですね」
――ヴィレヴァンらしさを作っていた世代の方が減ってしまったのですね。
ヴィレ全「あとは、ヴィレヴァンという特殊な空間の魔法がかかりにくくなった時代背景もありますね。創業者の菊地敬一さんが、自分の好きなものを集めてできたお店がヴィレヴァンです。ヴィレヴァンのあの独特な空間に入ると『こんなのだれが買うんだろう?』という商品も、ワクワクや期待でつい買ってしまいますよね。
変な商品や割高な商品でも、買ってしまう魔法の空間だったと思います。
でも、
今はインターネットでどんなものでも買えますし、値段もすぐに調べられます。その結果、相場はよくわからないけど、ヴィレヴァンに来たらとりあえず買っちゃう、という空間の魔法が解けてしまったのかもしれません」