悪女キャラにもしごできキャラにも共通しているのは“強い女性”という印象。それが菜々緒さんのパブリックイメージとなっていました。
そんなパブリックイメージを逆手に取ったのが、最新主演作の『無能の鷹』だったのです。
菜々緒さん演じた主人公・鷹野ツメ子は、ITコンサル会社の営業部に所属する新入社員。エレガントな見た目とスマートな所作で超有能な中堅エース級の風格を備えているのですが……中身は真逆。
しごでき風なのは表面だけで、PCの起動の仕方がわからない、ダブルクリックやフォルダの意味がわからない、コピー機もまともに使えない、「燃費」を「もえぴ」と読んでしまう。
インテリジェンスを感じさせる落ち着いた口調で「難しいことを考えると頭が痛くなるんです」、悪びれもせずにさわやかな笑顔で「私、“なにがわからないのか”わからない」など、迷言を連発する。
そんなふうにシュールな笑いを生み出していく無能キャラでした。
あまりに菜々緒さんに悪女やしごできの印象が強かったため、“超有能に見える”という物語の根幹設定への説得力が非常に高くなりました。そして仕事が全然できないというキャラがカウンターとなり、新鮮に映ったわけです。
当然そのギャップまで計算にいれたうえで、これまでの積み上げて来たキャリアを逆手に取った、大胆な役選びだったと言えるでしょう。