また、「別にゲイだからって全ての瞬間が辛いわけじゃない」というセリフの鋭さも半端ではない。マイノリティという言葉だけ聞くと、どうしても“可哀想な人”と想起されやすい。ただ、そういった連想を容易にしている背景として、
「マイノリティには不幸でいてほしい」という“ある種のニーズ”が影響しているのかもしれない。
2023年に公開されたアメリカ映画『アメリカン・フィクション』では、売れない小説家のモンク(ジェフリー・ライト)が小説を書き上げるも「黒人らしくない」という理由から出版を却下される。モンクは半ばやけっぱちになり、“貧困にあえぐかわいそうな典型的な黒人”が登場する小説をリリースしたところ、まさかの大ヒット。
黒人が虐げられることに多くの読者が熱狂する様がコメディタッチで描かれていた。

『American Fiction』(Blu-ray)
『アメリカン・フィクション』ではかわいそうな黒人を“消費”する現代社会の歪(いびつ)さがユーモラスに表現されていたが、実際にマイノリティが不幸であることに安心感を覚えたり、そんなマイノリティに寄り添うことに自己陶酔したりしている人は一定数いるかもしれない。そういったところまで想像したくなるほど、2話の剣聖のセリフにはインパクトがあった。
今後もどのようなストーリーが展開され、どのようなパンチラインが飛び出すのか楽しみにしたい。
<文/望月悠木>
望月悠木
フリーライター。社会問題やエンタメ、グルメなど幅広い記事の執筆を手がける。今、知るべき情報を多くの人に届けるため、日々活動を続けている。X(旧Twitter):
@mochizukiyuuki