ですが、その数日後、新郎から「式をキャンセルしたい」との連絡がありました。私は驚いてしまい、何かこちらに不手際があったのかと確認しましたが、「いえ、違います。ふたりの問題です」とのこと。
規約に基づき、内金返金の処理をしなければいけない旨を伝えると、「そちらにもう一度行きます」と言われました。私はてっきり、新郎のみかと思いましたが、おふたり揃って来られました。キャンセルの場合、おふたりが揃ってということは少ないです。

その様子を見た私は「よかった、破談ではないんだな」と思ったのも束の間、返金処理の対応をしている間も、おふたりはまったく口を開きませんでした。私もただならぬ様子に、必要なこと以外は何も言いませんでしたが、返金処理を済ませ、その場で新郎にお渡しすると、その半分を新婦に渡し「
はい!これできれいさっぱりおしまい!」と吐き捨てるように言いました。
新婦も奪い取るように現金を受け取り、何も言わずに席を立ちます。新郎もすぐに席を立ち、私にも何も言わずに出口に向かいます。私は驚いたまま、おふたりの後を追いましたが、お互い言葉を交わすことなく、もちろん私とも挨拶をすることなく、お互い反対方向に背中を向けて歩いて行きました。
「え?なに?なに?」と、私は何が起こったのかわからず、反対方向に歩いて行ったおふたりの姿が見えなくなるまで見送りましたが、どちらかが振り返ることなどはなく、そのまま真っ直ぐ歩いて行かれました。
私は、呆然と立ち尽くしていまい、何かあったんだろうと思いつつも、あまりにもおふたりが美し過ぎて、そのときですら映画のようだな……とも思ってしまった出来事でした。二人の間に何があったのか、私たちには知る由もありません……。
<文/長谷川真美>