子どもたちのために、ピコ太郎を限界まで絞り切りたい
――「Empower Children(エンパワー・チルドレン)」が立ち上げられたのは、なぜだったのでしょうか。
古坂:主催の保屋松さんはエイベックスのマネージャーのトップだった方なのですが、2013年にお子さんが小児がんになったんです。当時は僕の現場にも来てくれたりしていたので話を聞くことがあったのですが、何が一番大変かというと、お金だと。アメリカで治療を受けなくてはならないのですが、そのために5000万円以上かかるというんです。当時、エイベックスの皆が必死で協力して何とかお金を集めました。
そのことがあって、保屋松さんは小児がんについてもっと知ってもらえるような活動をしようと団体を立ち上げられました。ピコ太郎もぜひにとやらせてもらっています。エイベックスにはすごいアーティストが大勢いますけど、2歳、3歳の子どもたちは知らなかったりするんです(笑)。でもピコ太郎は、知らなくても楽しんでもらえる。その子たちを盛り上げるために、ピコ太郎を最後の最後まで絞り切ってやろうと思っています(笑)。
――「Empower Children」では、どんな活動をされているのですか?
古坂:病院の広いホールをお借りして、ライブをしたり、ライブを病室に生配信したり、隔離病棟の子どもたちを訪問したりしています。コロナ禍ではなかなか訪問が難しかったのですが、2024年11月からは「LIVE EMPOWER CHILDREN 2025 LIVE TOUR IN HOSPITAL」としてエイベックスのアーティストのTRFさん、hitomiさん、大原櫻子ちゃん、AAAの與くんたちと一緒に病院をまわっています。
――病院をまわったとき、子どもたちの反応はどうでしたか?
古坂:完全に隔離された病室の子どもたちとは電話越しにしか話せないのですが、それでもガラスをバンバン叩いて喜んでくれたり、中にはお母さんに電話を渡されても持てないほど小さくて、きょとんとしてる子もいました。体調によってはずっと苦しそうな様子の子もいましたね。個室も大部屋もあって、小さな子どもたちの部屋にはアンパンマンやプリキュアのグッズがあったり。10代の女の子達の大部屋はみんな同じ人気アーティストの写真を貼っていて、ピコ太郎たちに気づくと、「うおっ!?」と驚いていました(笑)。
――親御さんたちはどんな様子でしたか?
古坂:子どもはもちろんつらいのですが、ママやパパたちもつらいんです。先日、病院を訪問したときは数日前に小児がんが発覚したばかりという親子がいました。おそらく、まだ何も受け入れられていない状態だったのだと思います。
親御さんたちは泣いてくれる方も笑ってくれる方もいて千差万別でしたが、ガラス張りの病室にいる親御さんたちは「がんを倒してやる!」と覚悟が決まっている感じの方が多かったです。悲壮感はなく、「あらっガラス越しだと反射して写真に映らないわ~!」なんて言ってみたり、お子さんに「せっかくだから何か喋んなさい!」と元気よく声をかけたりしている方もいましたね。
小児がんの子どもたちの様子が見られる動画はネットにいろいろとあるので、ぜひ一度見てもらっていろいろなことを感じ取ってもらえたらいいなと思います。
――実際に病院を訪問して感じたことはありますか?
古坂:お医者さんが子どもたちの表情を見て、「すごい! 笑ってる」と言ってくれたりしていたので、普段よりも笑顔になってくれているなら嬉しいなと感じました。でも、子どもたちの苦しそうな姿を見ると、僕らも精神的につらくなってしまいますね。
僕も2018年に子どもが産まれたので、小児がんという病気の残酷さをより強く感じるようになりました。親にとって子どもは何よりも大切で、儚くて弱い存在です。子どものためなら、自分の命をもためらいなく差し出せます。そういう存在が、今まさに命懸けで治療しているのを見たので、「それを応援するのは自分のライフワークだ」と決めました。ピコ太郎くんに人を集められる発信力があるうちはできる限りのことをやっていきたいと思います。
<取材・文/都田ミツコ 撮影/鈴木大喜>
都田ミツコ
ライター、編集者。1982年生まれ。編集プロダクション勤務を経てフリーランスに。主に子育て、教育、女性のキャリア、などをテーマに企業や専門家、著名人インタビューを行う。「日経xwoman」「女子SPA!」「東洋経済オンライン」などで執筆。