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活動休止を経た27歳俳優が“エンタメ界の宝”である理由。過去作の監督も唸る才能とは

伊藤健太郎は、エンタメ界の宝

 ほんとうに必要なことだけをする。それが、自分の演技スタイルであり、俳優としての役割だと表明しているかのような伊藤健太郎は、日本のエンタメ界にほんとうに必要な才能だと思う。2025年1月5日に放送された『突然ですが占ってもいいですか?』(フジテレビ)に出演した伊藤が、活動を休止していた期間についてふれていたのを見て改めて強く思った。  占い師に「24歳のときにものすごく強いプレッシャー」と指摘された伊藤が、決して遠くはない記憶の糸を手繰り寄せる沈黙の時間。ズームアップするカメラの動きが、緊張感を伝える。じっくり間を置いた伊藤は「一年お休みさせていただいてた時期」と口にした。 「そこから一発お仕事させていただいた年かな」と続ける。番組内で具体的な作品名は挙げられていないが、その「お仕事」にはたぶん、阪本順治監督作にして、伊藤の復帰後初主演映画『冬薔薇』(2022年)が含まれている。  地方都市でくすぶり、悪ぶれる主人公・渡口敦役を演じた。緊張と気概。それでも、伊藤の演技は、変わらずにシンプルそのもの。  不良たちとのけんかで足を負傷した敦が入院先のトイレで用を足す印象的な場面がある。凄みも飾り気もない。丸裸同然の伊藤が便座に座っているだけ。  活動休止期間を置いて、それでも自分が俳優として生きること。今は自分のもてるすべてを映画に捧げる。捨て身の彼が映画に奉仕するかのような様が感動的である。 『未恋』は復帰作以降の作品だが、ライトなラブコメ作品でも気概に満ちた伊藤健太郎らしい演技を楽しめる。伊藤健太郎は、ほんとうに必要な才能であり、エンタメ界の宝だ。 <文/加賀谷健>
加賀谷健
コラムニスト/アジア映画配給・宣伝プロデューサー/クラシック音楽監修 俳優の演技を独自視点で分析する“イケメン・サーチャー”として「イケメン研究」をテーマにコラムを多数執筆。 CMや映画のクラシック音楽監修、 ドラマ脚本のプロットライター他、2025年からアジア映画配給と宣伝プロデュース。日本大学芸術学部映画学科監督コース卒業 X:@1895cu
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