
『連続テレビ小説 虎に翼 Part1 (1) (NHKドラマ・ガイド) 』NHK出版
岩田のソロ楽曲世界に誘導されながら、甘く、ほどよく苦いビタースウィートな雰囲気と味わいを楽しむ。というか、彼の楽曲一つひとつが、ビタースウィートな一粒一粒になっている。「korekara」を収録した1stアルバムタイトル『The Chocolate Box』そのもの。トラックひとつが、チョコレート一粒のような嗜好がこらされている。スウィートがあれば、ビターもある。そんな全12曲。チョコレートの箱を開けて「どれにしようか」と自由に選ぶ感覚だった。
もしかすると、岩田は甘くほろ苦い感覚をソロのテーマにしているのかもしれない。実際それは楽曲だけではなく、彼のソロを構成する俳優活動にもいえるからだ。2024年最大の名演のひとつである朝ドラ『虎に翼』(NHK総合)で特筆すべきビタースウィートな場面がある。
岩田は、主人公・佐田寅子(伊藤沙莉)と恋仲になりかけた同僚判事・花岡悟を演じた。第7週第31回で、裁判官試験に合格した花岡と寅子がレストランで食事する場面。地元であり赴任先の佐賀まで付いてきてほしいという思いを秘めた花岡だが、どうしても正直に言えない。
結局、鈍感な寅子はその気持ちに気づかず、花岡は本心を呑み込んだ。夜の広場。噴水前。絵画的構図の中、寅子は「お互い頑張りましょうね」と右手で握手する。花岡は「ありがとな、猪爪」と返すばかり。彼女がさらに「またね、身体に気をつけてね」と言っても花岡は何も言わず、寅子が握った右手をあげ、背中を向けてあばよという素振りをする。
この無言の素振りが、その後全編を通してビタースウィートな尾を引いた。あぁ、岩田さん。あなたの生誕祭にそんな苦くも甘い余韻を感じられる贅沢をぼくらはどう噛み締めたらいいのだろうか?
<文/加賀谷健>
加賀谷健
イケメン研究家 / (株)KKミュージック取締役
“イケメン研究家”として大学時代からイケメン俳優に関するコラムを多くの媒体で執筆。アーティストマネジメント、ダイナマイトボートレース等のCM作品やコンサートでのクラシック音楽監修、大手ディベロッパーの映像キャスティング・演出、アジア映画宣伝プロデュースを手掛ける。他に、LDHアーティストのオフィシャルレポート担当や特典映像の聞き手など。日本大学芸術学部映画学科監督コース卒業。
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