お恥ずかしい限りですが私の失敗談をひとつ披露させて頂きます。
まだ新聞コーナーを担当してまもない頃。
当時世の中に定着し始めていたジェルネイルをサロンで施していただき、私はご機嫌で出社。新聞コーナーをいつも通りに担当していたところ、白地に小さな石がついたキラキラの爪で新聞を指差す私にいち早く気づいたのがみのさんでした。
みのさんはいかにも楽しげな様子を残しながらも、数人いらしたスタジオコメンテーターにむかって(今議員さんになっていらっしゃる杉尾さんがいらしたような……)「見てください! こんなすごいものが爪についてますよ!」と、わざと騒いでみせたのです。はい、本番中のことです。
私はその場で、ああ、これはとんでもないことをやらかしてしまったのかもしれない、と真っ青になり、必死に指先を隠す……なんて事態に。
これは私の中で「爪事件」として今でも記憶に残っていますが、
当時の担当ディレクターは激怒。人の命の問題を扱うこともある新聞にむけて、キラキラの石がついた爪をチャラチャラ指すとは何事かと。
さらに、私は立場的に国内を取材で飛び回る可能性があるアナウンサーでした。災害が起きた際、被害にあった方にそんな爪でマイクを向けるつもりか、と言われたのです。
まったく持って、その通りなのです。
当時の私は入社1、2年目くらいだったと記憶していますが、自分の意識の低さ、想像力の欠如を大いに実感し、いたたまれなくなりました。そのジェルネイル、スタジオの片隅で無理くり全部剥がした記憶があります。

現在の私。爪はこのとおり、ノータッチです
この一件以来、私は爪に関してはまったくノータッチを貫いています。
『朝ズバ』が続いていた間はもちろん、退社後も、フリーアナウンサーとして北海道で仕事している今も、です。
仕事柄、時折薄いマニキュアを塗ることはありますが、すぐに落とすようにしています。落ち着かないのです。
今時珍しいですね、と言われますが、曲がりなりにもニュース番組に呼んでいただく人間として、「素顔」ならぬ「素爪」は貫いていきたいのです。
私の派手派手な爪に真っ先に気づき、面白おかしい空気に包み込みながらもしっかりと自覚を促してくれたのは、他ならぬみのさんでした。
あのときの担当ディレクターも、みのさんが感じていたこと、注意したかったことを代わりに言ってくれたのでしょう。テレビでニュースや情報を扱うことに対する責任の重さをしっかりとわからせてくれたのが『朝ズバ』であり、みのさんでした。
毎日夜中に出社する生活は、時には体がついていかない日もありましたが、毎日が大運動会のような疾走感と学びに溢れており、あれは紛れもなく私の青春時代でした。
みのさん、ありがとうございました。
<文/アンヌ遙香>
アンヌ遙香
元TBSアナウンサー(小林悠名義)1985年、北海道札幌出身、在住。現在はフリーアナウンサーとしてSTV「どさんこWEEKEND」メインMCや、情報番組コメンテーターして活動中。北海道大学大学院博士後期課程在籍中。文筆家。ポッドキャスト『
アンヌ遙香の喫茶ナタリー』を配信中。Instagram:
@aromatherapyanne