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我が子から突然「息子と呼ばないで」と告げられ…50代の母が“抱いた感情”とは

ノンバイナリーが直面する課題

アミア・ミラーさん――とてもオープンな印象を受けましたが、本書ではノンバイナリーの4割が自殺を考えたことがあると書かれています。アメリカにおいても、いまだにノンバイナリーやLGBTQ+に関して課題は多いと考えていますか? アミアさん:私とアレックスがそうであったように、世代による認識の差は大きく関わっていると思います。特に信仰心の篤い親のなかには、保守的な考え方をもつ人が多いようです。それから地域差もあります。シアトルは比較的安全といえる場所ですが、そこから1時間ほど車で移動しただけで、非常に保守的な考え方の地域もあり、ノンバイナリーやLGBTQ+が受け入れられてはいないようです。 最近では、トランスジェンダーの男性が誘拐され、拷問を受け、最終的に命を奪われるという事件もありました。アメリカの差別的な行動はわかりやすく暴力的で、考えの違う者同士が対立したときに危険な目に遭うことがあります。だから、どこに自分自身の身を置くかは慎重になるべきです。 ――日本ではSNSでの誹謗中傷が多い一方で、アメリカは直接的な行動が多いのですね。 アミアさん:アメリカは行動に移すことにとても大胆な国です。その大胆さが、一方でノンバイナリーやLGBTQ+の自殺率の高さにもつながっています。なので、自分のことを理解しても、周りから受け入れられるかはわからないですし、家族や学校、コミュニティから自分の安全が脅かされることを恐れる当事者は多くいます。 SNS上での攻撃もありますが、最近は変化が見られます。それは、批判してきた人に対して「私たちも受け身ではいられない」「舐めんなよ」と対抗する人も見られるようになったこと。あなたがそう言うのなら、それらを世間に広め、会社の上司に知らせ、場合によっては解雇してもらう。今まではマイノリティに対して一方的に攻撃的な意見が多かったのですが、これからは反撃していく番です。とてもかっこいいと思いますし、ついにここまで来たと感じています。 ――最後に、今のアミアさんがお子さんからカミングアウトを受けたとしたら、どのように声をかけてあげますか? アミアさん:カミングアウトされてからの800日の経験があるので、今なら「本当の自分を発見できて良かったね」と素直に言えると思います。今でもノンバイナリーの定義が人によって異なることに理解できないこともありますが、子どもが幸せなら私も幸せです。 <取材・文/Honoka Yamasaki 撮影/市村円香>
Honoka Yamasaki
昼間はライターとしてあらゆる性や嗜好について取材。その傍ら、夜は新宿二丁目で踊るダンサーとして活動。
Instagram :@honoka_yamasaki
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